グローバル時代に求められるサプライチェーン・マネジメントと人権

東洋経済CSRセミナー

サプライチェーン・マネジメントと人権

第5回東洋経済CSRセミナー「グローバル時代に求められるサプライチェーン・マネジメント」のレポート記事です。

CSR調達を含めて、世界中で注目されるCSR領域でもあるサプライチェーン・マネジメント。特にCSRのリスク対応という側面では、サプライチェーン・マネジメントを知らずして活動に取り組むことはできないくらい重要な概念です。

しかし、実際に外部ステークホルダーが満足できる充実した取組みができている日本企業はどれくらいあるでしょうか。今回は講演に加えて企業のCSR担当者の現場の話も聞けて非常に参考になりました。

箇条書きの部分もありますが、セミナーのメモなのでご了承いただければと思います。(一応有料のセミナーだったので、書き起こしや詳細解説はしません)

講演

CSRは経済動向と同じくグローバル化している。全体的に「人権」はネガティブにイメージが多いかもしれない。

人権問題は政治的な問題でもあるが、企業も関ることが多い。人権問題が先進国から新興国に主戦場が移ってきている。

サービス業も含めて、商品・資材を海外調達をしていない企業はほとんどないはず。人権問題は間接的に事業の影響を与える、その範囲を考える必要がある。

「ガバナンスギャップ」。新興国の政府や法律が“有名無実”なモノになっている可能性も高く、新興国市場に特有の国際人権問題への対応が必要。日本企業は「セクハラ・パワハラ」などの社内の人権対応で終わっていることが多い。

国内人権と国際人権の差を知るべき。国際人権は「人として生きる権利」。「思いやり」というレベルではなく、生存権として考える。

「Human Rights Risk index」で“世界の高リスク地域”を把握する。日本は労働問題などはあまりないように見えるが、インデックスによれば、リスクは決して低い国ではない。

人権リスクと経営リスクが重なる領域が多くなっている。

■■■主な人権課題
1、労働者の権利
2、安全衛生
3、移民労働者・人身取引
4、地域住民の生活・文化
5、水資源へのアクセス
6、保健医療のアクセス
7、表現の自由
8、プライバシー
9、製品の誤使用
10、紛争鉱物

「水資源へのアクセス」は、環境問題ではなく人権問題。水は地域の公共資源であり、地域住民の生活の最低限の権利。

「製品の誤使用」は、自社の商品が人道的ではない活動に使われてしまう場合。意図していない利用でも、製造元会社の責任(姿勢)が問われることがある。

業種によって、考慮すべき最優先対応の人権問題は異なる。まずはこれを知ること。

ファブレス企業のほうがサプライチェーンの労働問題が起きやすい?それは自社工場ではなく他社工場なので、すべての情報や実態をつかみにくい。

「人権の尊重」とは“他者の人権を侵害しない”こと、加えて”人権への負の影響に対処する”ことが必要。

人権対応はどこまで行なうべきか。これは「企業の事業活動とつながりのある関係性での影響」を考慮する。「ビジネスと人権に関する指導原則」から考えれば、二次サプライヤーには対応というより“働きかける”程度の関わりでいい。まずは、一次サプライヤーへの完璧な対応が必要。

バウンダリー(事業影響範囲)を考慮し、「直接つながりのある関係」の所から対処すべき。

まずは、ステークホルダーを知ること。どの地域にどんな人がいて、どのような事業による影響を与えるのかを知る。評価フレームワークを作る。

ステークホルダーとの信頼性構築をはかる。ステークホルダーと向き合う。社外に働きかけていくことで、良好な関係を作る。人権対応はステークホルダーエンゲージメントでもある。

ステークホルダーとの協働を企業価値向上につなげる「ステークホルダー・リレーションズ」という考え方が重要。

パネルディスカッション

「サプライチェーン」は物流の話ではない。なくはないけど。

企業経営のリスクとは何かを考えたとき「安定供給がなくなること」がある。モノがなければ売れないので非常に大きなリスク。食品関係の販売をするので、一次産業(自然相手)の環境課題も影響が大きい。

食品関係の会社のリスクは「フードテロ」もあるし「BCP」の課題などもある。水リスク、環境リスクもあるが、サプライヤー企業自体にどう対応するか、というのも課題。

エンターテイメント系企業の場合、生命の維持に直接関ることはあまりなく、BCPは重要であるが、最優先の経営リスクではないかもしれない。

ただ、何かしらの景品・玩具を使ったりもあるし、その景品やプロダクトの製造責任は大きな影響がある。製造メーカーとのサプライチェーンマネジメント。玩具・ぬいぐるみなどの製造監査なども今後精度を上げていきたい。

ビジネスモデルのどこにどれだけ影響するのかを、CSR担当者が把握すべき。全社的にサプライチェーンマネジメント対応することは難しい。調達部門だけではなく、営業担当などお客様との接点がある人がCSRにおけるサプライチェーンマネジメントを知るべき。

CSR担当者がサプライチェーンや人権の話のすべてを対応できない。社内での協力が必要。でも、社内で対応できる知識と経験がある人ってどれだけいるの?っていう。

食品系企業の経営リスクの多くはサプライチェーン上にあるのは明確。しかし、サプライヤーとして小規模農家も多く、電機・自動車のように、工場単位のようにまとめての対応ができなかったりする難しさはある。

人権対応として、経営の中に位置づけるだための「人権ポリシー」を作らなければならない。

デューディリジェンスはPDCAの話。日本語での「人権」は難しい。社内の人に話すときは「人権」以外のワードを使った方がいいのかも。CSR担当者は「人権」というワードは使うべきだけど、社内では別のほうがいい。意味のギャップがあり本質が伝わらない可能性がある。

→人権=働きやすく能力の発揮しやすい職場環境を作る、とかかな。

ステークホルダーを中心とした影響をまず考えるべき。「どこの、誰の、何の権利」を侵害する可能性があるのかを知るべき。

CSRは様々な事業領域と重なっているため、「これはCSRである、ない」といった定義による区分けはあまり意味がない。CSR部門だけがCSRの課題に対応するのは不可能。経営リスク対応は特定部門のみでは対応できない。それぞれの部署が連携して進める必要がある。

CSRの社内浸透はどうやって進めて行くべきか。社外のプレッシャーをうまく使うことも必要かもしれない。

NGOに叩かれることをリスクととらず、そのアクションに真摯に対応することで、市民社会からの信頼を勝ち取ることもできる。

外からのプレッシャーによる社内への影響はとても大きい。社内の対応も重要だけど、企業の外のほうがリスクは多い。社外の評価を取り入れる仕組みが作ること。

日本企業が日本ためにやっている企業は知らない、海外の経営リスクはたくさんある。

まとめ

人権問題とはいいますが、環境問題やサプライチェーン課題など様々な領域に関る問題なのだと感じました。

CSR活動として取組むには、人権問題だけピックアップするのではなく、ステークホルダーの接点におけるCSR活動全般で、どれだけ人権問題を考慮できるかがポイントなのかもしれません。

海野さんの書籍は何冊か持っていますが、もう一度読み直したいと思います。

過去のレポート記事

・第4回:投資家目線の情報開示とは–投資にCSR/ESG情報は必要か
・第3回:CSRとしてのLGBT対応のカギは「アライ」にあり!?
・第2回:戦略的なCSRは競争戦略として成り立つのですか?
・第1回:現場経験者が語る、企業が社会貢献をすべき理由



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