CSRコミュニケーションがもたらす企業価値と企業評価向上

CSR企業価値評価

CSRにおける企業価値と企業評価向上

CSR評価って、どんな基準・指標・方法を用いて行なわれるものなのでしょうか。

今回はCSR活動そのものではなく、CSRコミュニケーションの側面から考えてみたいと思います。

どんなにCSR活動が素晴らしくて、直接的なステークホルダーにインパクトが出せても、マジョリティである“その他のステークホルダー”に情報を届けることができなければ意義が半減してしまいます。

「ものづくり」と同じで、良いモノを作れば勝手にクチコミが広がる時代ではないのです。良いCSR活動をしても、その情報を届けられなければ評価すらされませんから。

CSR活動における情報の絶対性とその価値

CSR情報は、IRや広報の発信する情報とは大きく異なる点があります。僕はそれを「情報の絶対性」と呼んでいます。

通常、企業情報は相対的なものです。競合他社と比べて、優れている・ユニークである・ストーリーがある、と情報マーケットで判断されます。

しかし、CSRなどのいわゆるソーシャルグッドの領域は、絶対的に“良いこと”なんです。“社会が良くなる”ことを否定する人はいません。そのコンテクスト(文脈)は、社会にとって絶対的に“善”のです。ですので相対性もあるものの、他社と比べて良い悪いという企業評価がそもそもナンセンスなのかなと。

僕は色んなセミナーで「CSRコミュニケーションはコンテクストが重要だ」と話をしているのはこのためです。イメージだけ煽っても、ステークホルダーが心から“良い”と信じてもらえる企業価値を作れなければ、長期的には支持されません。

その結果どうなるかというと、CSR活動におけるブランディング効果がほとんどなく、コミュニケーション・コストは減ることがないのです。つまり、CSR活動はコストのままだよってことです。

10年前と違い、ソーシャルメディアやインターネットの普及により、企業の発信する情報だけではなく、個人を含めた多面的な情報から、その情報の価値を判断されるようになりました。

企業は「誰のために、どれだけ価値提供をし、社会を良くすることができるのか」をもっと考え実行すべきです。日本には何百万もの企業があります。すべてがそうでないとしても、ありきたりなCSR情報を発信しても、特に顧客などのステークホルダーには届きませんよね。

これは当然ですが、メディア関係以外のお仕事をされている方であれば、企業のCSR情報プレスリリースなんてまず見ないし、ランチの話題にもならない。届きさえすれば、何らかしらのポジティブな影響は出せると思うのですが…。

CSR情報のニーズを知らない

多くの企業は「ステークホルダーが本当に欲しいCSR情報は何か」を突き詰めて考えられていないのでしょう。

企業側とステークホルダー側で「情報ニーズのギャップ」が起こると、そもそも企業価値を伝えることもできないし、その先にある企業価値向上なんてゴールには到底届きません。企業評価するのは自分たちではなく、第三者であるステークホルダーですから。

そもそもステークホルダー側に情報ニーズ(需要)がなければ、情報の価値を受け止めてもらえません。CSR関連の情報開示を積極的に行っていると“思い込んでいる”会社はこの感覚がないのかもしれません。

CSR的な企業広告のテレビCMが悪いとはいいませんが、ニーズのない所に見せかけだけのストーリーを広く展開しても届くわけないじゃん。興味のない人に興味をもってもらうって超高難易度です。

そもそもCSRコミュニケーションはステークホルダー・エンゲージメントという考え方が非常に重要であり、マスメディアでは情報を届けたいステークホルダーごとには届けられないと思っています。単純に、「株主・投資家」と「顧客」では知りたい情報が異なるはずです。マスより、それぞれのステークホルダーに届けられるセグメントをされたメディアを利用したほうが効果が出そうな気がします。

何が言いたいかというと、「自分たちは良いことをしている、なぜ理解してもらえないのか?」というプロダクトアウト思考(商品の開発・生産を行う上で、作り手の理論を優先させる方法)に偏った情報発信は危険ということです。

だからこそ、ステークホルダー・ダイアログなどでステークホルダーの需要(ニーズ)をウォッチする必要があるのです。企業ステークホルダーの主要5カテゴリー(株主/投資家・取引先・従業員・地域社会・顧客)くらいはエンゲージメントを意識した方がいいと思うんですけどね。

企業価値を高めるには、当たり前ですが、価値を認めてもらえるコミュニケーションが重要です。では、CSR評価を上げるCSRコミュニケーションについて、一つフレームワークを紹介したいと思います。

CSRコミュニケーション評価「7i」

・情報収集力|自社や業界・競合に対するメディアの評判や、ステークホルダー動向などについて収集・把握する能力
・情報分析力|収集した情報に基づき、自社の経営課題・広報課題を洞察する力と、それを組織的に共有する能力
・情報構築力|戦略構築、目標管理、メディアリレーション、ステークホルダー理解促進を実行する組織能力
・情報発信力|様々な情報発信手段を駆使して行なう能力
・情報媒体力|ウェブメディアで情報展開する能力
・情報管理力|ステークホルダーとの関係構築、社内組織、リスクマネジメントなど組織体制構築を行なう能力
・情報連携力|社内連携における能力

僕が、CSRコミュニケーション評価で使うチェックリスト・フレームワークです。たとえば上記のカテゴリーごとに、自社のCSRコミュニケーションをチェックしてみるのがいいと思います。

CSRは多面的な枠組みなので、情報発信の質は、情報の構築・管理・連携することが重要になるんです。

実際のコンサルティングでは、それぞれ10項目、全部で70項目のチェック項目を準備し、CSR評価につながるコミュニケーション活動ができているか、企業価値向上につながるコミュニケーションができているかを確認しています。

特にCSR活動を一通りやっていて「ネタ切れ」になっている企業は、一度チェックしてみると良いでしょう。具体的な項目は非公開ですが、簡易版を使って、今年はいくつかご依頼いただいているセミナーで開示していきます。「情報分析力」だけちょっとネタばらしすると以下のような項目があります。

■情報分析力
・ウェブ上で定期的な自社CSR情報のモニタリング活動をしている
・評価機関のCSR関連質問表で「回答すべきもの」、「回答すべき人」は決まっている
・ステークホルダーごとにインフルエンサーを1人以上ピックアップしている
・インフルエンサー(有識者)の動向や発言を分析している
・CSRコミュニケーションにおける評価基準を決めている

単純に、上記の5項目だけでも実践できていると、CSRコミュニケーションの質が格段に上がります。こういうチェックリストを各社準備しておくと社内共有も進みますし良いと思いますよ。

まとめ

企業価値・CSR評価の向上については、ロジックとしてはそこまで難しい話ではないと思います。要は、「伝える」から「伝わる仕組みを作る」へ、CSRコミュニケーションの業務プロセス移行をすればいいだけ。

CSR担当者を含め、IR・広報がどんなにがんばって情報発信をしても、ステークホルダーに届かなければ評価はされません。

このあたりの課題をクリアし、1社でも多くの企業が、ステークホルダーと良好な関係を築けるきっかけになれば幸いです。

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