世界レベルで深刻な“水の問題”
先進国でかつ水が豊富な地域に住んでいるとなかなか実感できない「水の問題」。
しかし、世界レベルで考えると、この問題はとても深刻で、国連によると7億人がきれいな水を得ることができず、25億人が基本的な衛生状態が確保できていない状況におかれています(ちなみに世界の人口は約70億人)。
水は生きていくのに必要不可欠ですし、衛生状態の確保も疾病防止には欠かせません。国連によれば、20秒に1人、衛生状態の悪さにより子供が命を失っているとのことです(毎年150万人に相当)。
遠い場所のこととして捉えられがちな水問題。
私たちにできることは何でしょう。超入門編となりますが以下の3つにまとめてみましたのでご参考ください。
日本人が知るべき水問題の3つのこと
1、私たちが使っている水の量を知る
日頃私たちが使っている水の量。これは案外の奥が深い話なのです。
飲んだり、料理したり、洗濯したり、お風呂、トイレで使ったり。1人1日あたり100リットル程度(2Lペットボトル50本分)と言われています。直接的な水の量としてはそれくらいが妥当かもしれません。
しかし“間接的”な水も存在します。
食品や衣料など、製品になるまでに相当の水を使っています。
その量は直接的に使うものの30倍とも言われます。牛肉だと1kgあたり1.5万リットルの水が使われ、お米だと1kgあたり3千リットル弱の水が使われていると算出されています。
使う水の量を把握する指標としてウォーターフットプリントを使うと判り易くなります。ウォーターフットプリントとは食料や製品の生産から消費までの全過程、あるいは組織・地域において使用される水の総量と定義づけられています。
食品や衣料が輸入品で、しかも水の供給が十分でない地域からきているとすると、私たちが使っているそれら製品のウォーターフットプリントはそれらの地域から水を取ってきてしまっている、と考えられます。
その製品のウォーターフットプリントがどれだけでどの地域からきているか。このあたり、考える必要があるということです。ウォーターフットプリントが高くても、水が潤沢な地域からの製品であれば、それほど大きな問題にはならないということになります。
国レベルでいいますと水(バーチャルウォーター)の主要輸入国は、ブラジル・日本・中国・イギリス。逆に輸出しているのは、豪州、アルゼンチン、インドとなります。
ヴァーチャルウォーターとは、農産物・畜産物の生産に要した水の量を、農産物・畜産物の輸出入に伴って売買されていると捉えるもの。工業用品でも適用できますが、農作物・畜産物に比べれば少なくなります。
日頃自分が使っている製品のウォーターフットプリントや産出国など、情報がもっと知りたいところです。
2、組織レベルでの水問題の解決法
世界レベルでの水問題。一体どうしたら解決できるのでしょうか。
NGOも頑張ってはいますが、範囲が莫大で、資金の関係上苦戦しているようです。
問題を抱えている国も資金不足で解決まで至っていないということが多いようです。
では国連などの世界的組織が取り組む、ということになりますが、問題を提唱は出来ても、実際に解決できるかというと難しいのかもしれません。
そういった世界情勢の中で、注目されているのは多国籍企業です。
製品を通してそれぞれの地域のウォーターフットプリントの移動に関わっていることもありますがその資金力、人材から大きな取組みができるのではないかと期待されています。
例えば、コカ・コーラ社などは地域における水の質や衛生状況の向上に投資をしています。
コカ・コーラは自社の製品についてもウォーターフットプリントの削減に努めており、2007年より世界自然保護基金(WWF)とコラボを組み、水保護についても取り組んでいます。
世界の人口増加などと平行して水不足が進みつつある中で、水の環境負荷を示す「ウォーターフットプリント」に対する関心も高まっており、ISO(国際規格化)が決定し、成立に向けた議論が行われているそうです。
CSRである、なし関係なく、そうなれば企業も知らなかったでは済まされないでしょう。
3、個人レベルでの、水問題の解決法
先にNGOはこの問題に対し、良い取組みをしてはいるものの、資金に不足していると述べました。
従って、信頼のおける、実際に行動を起こしているNGOに寄付をするというのも個人レベルでこの問題に関わりたい方にはよいかもしれません。
ただ、残念なことに、日本で活躍するNGOは限りなく少ないのが現状です。日本語にローカライズされたデータなどは多くないのです。
環境省も、ウォーターフットプリント対策なども加味した「水環境戦略タスクフォース」なども組み調査していたようですが、現状、私一般生活者まで情報は届いていないのが現状だと思います。
まとめ
世界レベルでの水の問題。不足している水は今後どう配分されるべきか。
また、今回取り上げませんでしたが、海水など現在飲料などには使えない水を使えるようにする等の技術開発もどんどん進んでいます。
技術者への世界的なニーズは相当高いようですし、それこそ、技術が確立できれば世界を変えるとても大きなムーブメントになるでしょう。
企業や個人が、水問題に対して何ができるのか。まずは、課題を知り、関心を持つことが大切です。
寄稿:Rach(英国在住)
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