創発型責任経営

本日、最新著書『創発型責任経営 – 新しいつながりの経営モデル』(日本経済新聞出版社、共著)が発売となりました。本日より全国の書店およびショッピングサイトでも順次発売されます。書店の店頭には25日午後か26日から並ぶと思います。私の3年ぶり3冊目の著書です。

『創発型責任経営』は、従業員や実践を軸としたCSR/サステナビリティの新しい経営モデルについての本です。神戸大学・國部克彦先生を中心として、CSR/サステナビリティ経営がご専門の神戸大学・西谷公孝先生、法政大学・北田皓嗣先生、プラスアルファで、実務家としてコンサルタントの私の4人の共著となっています。

書籍出版のきっかけについては先日「[お知らせ]最新著書『創発型責任経営』を出版します」という記事にまとめたので、本記事では、少し内容部分を紹介したいと思います。

目次

第1章、責任が価値を生む経営
第2章、アカウンタビリティからレスポンシビリティとしての責任へ
第3章、創発型責任経営への転換
第4章、オムロンの企業理念実践活動
第5章、ブリヂストンの Our Way to Serve
第6章、丸井グループの手を挙げる組織づくり
第7章、ヤフーの課題解決エンジン
第8章、三菱重工グループの「き・ず・な活動」
第9章、創発型責任経営のデザイン
第10章、創発型責任経営のプロセス
第11章、創発型責任経営でSDGsに挑戦する
第12章、創発型責任経営の効果

内容

「つながり」の意味

目次とAmazonの「内容紹介」を見ていただけば、だいたい内容はご理解いただけるかと思います。そこであまり触れられていないポイントとしては、本書の副題にもなっている「新しいつながりの経営モデル」も、本書のメッセージに深く関わっています。私の言葉でいうと、まさにステークホルダー・エンゲージメントそのものであります。

これは私個人の考えですが、従来のCSRやSDGsは活動の主語が企業(自社)となっていました。しかし、そもそも誰にために、何のためにCSR活動をするのかと考えると、必然的に主語が社会やステークホルダーになるはずなのです。本書では、そのCSRに対するつながりを明文化し「新しいつながりの経営モデル」を形にしました。当然、つながりとは社会性の文脈だけではなく、経済活動とのつながりも深くあります。そのあたりも、先行企業の事例調査を含めてまとめています。

実践的CSR

もう一つあるとすれば、本書は従来の書籍より“実践的”なCSR論が展開されている点です。

世の中のCSR/SDGs関連書籍は事例紹介か戦略論がメインであり(馬鹿にしているわけではありません)、実践的なフレームワークはほとんどありませんでした。本書では、特に私の担当箇所ですが、CSR活動は実践してナンボということで、企業規模に関わらず実践に投入できるであろう「創発型責任経営のプロセス」(オペレーション・フレームワーク)をまとめています。

「ステップ1」から「ステップ5」までまとめて、基本的にそのまま実践してもらえれば(大変な部分もありますが)、それなりの成果が出せるような枠組みを作りました。色々なCSR関連の書籍を読んで「で、結局我が社は何をすればいいのか?」と感じていた方には、特にご理解いただけるであろう内容にまとめているつもりです。

しかしながら、「創発型責任経営」という新しいCSR経営のコンセプトであるので、すべての方にご理解いただけるとは思っていません。少なくとも、私は次世代のCSR経営における重要なコンセプトの一つだと考えていますし、CSR活動における社内浸透、企業価値向上、ステークホルダー・エンゲージメント、などに課題を感じている方にこそ読んでいただきたい内容になっています。

創発型責任経営 新しいつながりの経営モデル

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企業が対処すべき社会的課題は、SDGsに示されている分野を見るだけでも非常に多く、既存のCSR手法では対応できない。また、少子高齢化、地域創生、働き方改革など、日本固有の社会課題への対応も急務である。このような問題に対応するためには、従来のコンプライアンス型のCSRや、KPIを設定してPDCAを回すCSR経営では対応できないのだ。また、現在の日本ではSDGsに大きな注目が集まりブームの様相を呈しているが、日本企業の多くの取り組みは、これまでの自社の活動をSDGsの枠組みに照らして分類しているだけであるため、早晩、大きな壁にぶつかることは避けられないであろう。SDGsを効果的に推進するためにも、新しいマネジメントの理念と実践が必要とされている。

そのためには新しい革新的なCSR経営のモデルが求められている。それは、従来のCSRの範囲を超えて、企業経営全体を対象とし、企業を社会問題の解決に向かわせるような仕組みを持つCSR経営である。そのためには、社員の創発性を軸とする制度設計が求められる。つまり、CSRの対象である社会課題は、与えられるものではなく、自ら探求しなければならない対象ということである。そのためには、受け身的なCSRから、社員1人ひとりが主体的かつ能動的に考えて行動するCSRへ転換することが求められるのだ。

本書は、このような活動を促進する仕組みを持つ経営を「創発型責任経営」と名付け、その理論を事例を分析して、実践に組み入れるプロセスまでを議論し提示するもの。「創発型責任経営」は、従来のCSRの範囲を超えた、全社レベルの経営手法であり、それを「理論」「事例」「実践」の3つの側面に分け、先進企業の具体的な事例を紹介しながら解説する。

出版記念シンポジウム

シンポジウムは7月26日に東京、8月2日に大阪で行われます。詳しくは「[お知らせ]出版記念シンポジウム「創発型責任経営」(7/26,8/2)」の記事をご確認ください。