仏教的ライフハック「八正道」

仏教で修行を行う際の基本スタイルの「八正道」というライフハック(生産性向上術)をご紹介します。

八正道とは、悟りに至る為の修行方法のことなのですが、現代の我々にとっても非常に興味深いフレームワークです。このライフハックさえ知っていれば、ノイズに惑わされることなく、思考のシフトができるでしょう。

釈迦が最初の説法において説いたとされる、涅槃に至る修行の基本となる、正見、正思惟、正語、正業、正命、正精進、正念および正定の、八種の徳。「八聖道」とも「八支正道」とも言うが、倶舎論では「八聖道支」としている。この 「道」が偏蛇を離れているので正道といい、聖者の「道」であるから聖道と言う。
 (wikipedia|八正道より)

以下で解説を。

1、正見(しょうけん)
自己中心的な見方や、一方に片寄った見方をせず、正しく物事を見るということ。

2、正思惟(しょうゆい)
自分本位の考え方や怒りや憎しみを持たず、大きい立場から、真理に照らし合わせて考えること。

3、正語(しょうご)
真理・法則に合い、目的にあった表現で発言すること、嘘や悪口を言わないこと。

4、正業(しょうごう)
日常の行為は正しいものでなければならないということ。真理・法則に合い目的から逸れず、周囲や社会の調和を乱す行動をするなということ。

5、正命(しょうみょう)
衣食住その他の生活財は正しく求めること。人の迷惑になる仕事ではなく、正しい仕事に就けということ。

6、正精進(しょうしょうじん)
正しい使命・目的に対して、正しく努力しつづけよ、ということ。

7、正念(しょうねん)
仏のような正しい心を持ち、その心を常に強く正しい方向にむけ続けよ、ということ。

8、正定(しょうじょう)
心を常に正しく置き、周囲の影響や環境の変化に影響を受けすぎないようにすること。

ライフハックは思考をもハックする

どうでしょうか。ぼくの印象では「とことんシンプル」。ノイズをとことんまで削って、「八正道」のような、ライフハックを作り上げている仏教のすごさを改めて思い知らされます。

生産向上なんて言うと軽薄かもしれませんが、ノイズをなくしていく生き方は、煩悩渦まく現代においてまさにライフハックだとぼくは思います。

この考え方は、個人だけではなく、企業経営においても同様にあてはまります。現代的な解釈をするとCSRのコンプライアンスにおける企業倫理そのものです。企業のポジションからみれば、これらの概念を経営に応用した「仏教経営学」という考え方もあります。

コンプライアンスというと日本では「法令遵守」と訳されますが、八正道のような法では規定されない、ソフトロー(法的規範)もその範囲となります。いわゆる商道徳と呼ばれるものです。

どんなに科学が発展し、情報技術が革命を起こしたとしても、先人が何百年、何千年と時間をかけて作り、語り継いできたフレームワークの価値は普遍的に存在し続けます。

まさに、この道徳とは社会・文化を反映するものであります。文化文脈そのものと言っても良いでしょう。社会がどれだけシフトしても変わらないものです。物事の本質とは、いつの世もそう変わりません。社会情勢も政治も価値観も不安定な現代でこそ、変えてはいけない自分自身の倫理・道徳が必要です。

この数千年、私達にとって大事なものは変わっていないのです。だから実は、シフトした先のあなたは、まだ見ぬ未来人ではありません。

シフトとは、「“変わらない”自分にシフトする」ことでもあるのです。