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日本のCSRの歴史は「モヤモヤCSR →シブシブCSR →ガツガツCSR」である

モヤモヤCSRからのシフト

1970年代にアメリカ企業において、企業の不祥事が続き、これを歴史的背景に自己の行動をモラル的に高めていこうという動きが起こりました。企業が社会的責任を認識し、経営によってその責任を果たすための仕組みを創り上げるべきという考えです。

それはつまり、環境への配慮、自社と関係する人々を尊重する姿勢など、「よき企業市民」であるための基本的な考え方。ビジネスエシックス(企業倫理)は、企業の非倫理的活動の多発というネガティブな要因から始まってはいますが、企業の存在意義が問われるなかで必然的に生じた動きでした。

その後、日本でも1990年に経団連が会員企業に対して、税引き前利益の1%を社会貢献に投じることを呼びかけ、「1%クラブ」を創設しました。日本でも90年代前半から(それ以前もありましたが)、企業の社会貢献活動が盛んに行われるようになっていたのです。

とはいえ、そんな黎明期の90年代では、大企業が他社の寄付額を見て自社の寄付額を決めるという、いわば、目的を目指さない“思考停止の社会貢献”が主たる活動だったようです。

一方世界では、2000年に企業の人権・労働・環境などの行動規範をまとめた国連の「グローバル・コンパクト」が発表されたり、イギリスとフランスで”CSR担当大臣”というポストが設けられたりと、活発な動きが続きました。

そして、それらの流れを受けて、ようやく日本において「CSR元年」と呼ばれる2003年が訪れます。企業にCSR部が初めて設けられ、一部の大企業がCSRを積極的に始めるケースも出てきて、日本のCSRにおけるターニングポイントとなった年です。

こうして2000年代前半に、まわりの企業や世界でのCSRの盛り上がりもあってか、様々な企業が“モヤモヤ”しながらもなんとなくCSR活動を始めました。

まだ、ウェブが発達しきっていない頃です。情報も少ないなか、暗中模索の五里霧中だったと予想されます。CSR元年からの数年間は、何か腑に落ちなくて“モヤモヤ”しながらの活動だったのではないでしょうか。「やるべき!」というのはわかっているんです。

でも、CSRって面倒だし、やったぶんだけ企業価値が上がるかというとそうでもないし、しょうがないからとりあえずしておくかな……、という感じだったと思います。

シブシブCSRからのシフト

2000年代後半は、モヤモヤしながらも、試行錯誤を繰り返し、企業は様々なCSRの取組みを実施してきました。これこそが、“シブシブ”CSRの始まりだったのです。「何か言われるから“シブシブ”やってやるよ」というフェーズです。

この段階では、CSRはまだよくわかってないし、経営や業績との関連は不明確ではあるけど、なんとなくやらなければいけない社会の雰囲気は、多くの企業が理解し始めていたのです。特にグローバル展開している企業は、海外のNGOのツッコミ(追及)があり初めて、CSRの重要性を認識したという所も少なくないようです。

ユニクロ(ファーストリテイリング社)の柳井氏の有名なCSRに関する有名なエピソードがあります。彼は元々CSRという考え方が嫌いだったそうです。しかしグローバル展開をするにつれて、さまざまなNGO/NPOから突っ込みを受け、NGOと組んでソーシャルビジネスをすることが武器になる、ということに気付いたのだそうです。

「ビジネスにおける差別化要因としてのCSR・社会貢献ビジネスをするのだ」というこの方針やエピソードは、他の敏腕経営者でもいくつか例があります。

しかし、能動的に動くのと同時に守りもきっちり固めないといけません。たとえば、法令を順守すること。これは規制による要請や強制、社会からの圧力に対して受動的に対応している段階です。積極的な環境活動をしている企業でさえ、この段階が疎かな場合が多々あります。

例えばアップル社が同社の環境活動の不備について、2012年にNGOグリーンピースの過激な抗議を受けた件などが、代表例ですね。世界一の企業体とも言われる、「あの」アップル社でさえまだ、一部がシブシブのフェーズにあるわけです。外的要因とはいえ、ある意味CSR的に変わろうとして、まだもがいている状態のようにみえます。

いまだに日本においてCSRは、法律で規定されている企業活動ではありません。しかしここ十数年、世界の至る所でCSR関連事項が法案化したり、ビジネス・マーケットではCSR報告がより重要視されたり、といったシフトがおこってきました。「やらなきゃマズいな」と気付き、“シブシブ”CSRを始めた企業が増えてきたのが日本の2000年代後半です。

CSRをしてもしなくても結果がわかりにくかった“モヤモヤ”していた時代とは異なり、CSRをしないことのグローバル・リスクを感じた結果、“シブシブ”CSRがこうやって普及していきましたとさ。その後、2010年代に入り、CSRは大手企業を中心に積極的に活動を行う「ガツガツCSR」へとその性質をブラッシュアップさせていくことになります。

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執筆者:安藤 光展[→プロフィール詳細]

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