統合報告/サステナビリティ報告で求められる3つのトレンド

統合報告書

統合報告/サステナビリティ報告のトレンド

私はサステナビリティ情報開示が専門ということで、この分野の情報収集や事例研究もそれなりにしているわけですが、先日発表した「サステナビリティサイト・アワード2021」の調査やトレンドも含めて、いくつかキーワードが導けたかなと思い共有します。以下の3つです。

1、ファインダビリティ(情報のみつけやすさ)
2、コネクティビティ(財務と非財務の整合性)
3、リアリティ(実現可能性)

詳しくはこちらも先日行った勉強会「2021年度 サステナビリティ情報開示勉強会」で解説をしたのですが、本記事ではそれに加えてもう少し解説をしたいと思います。

これらは急に出てきた話ではなく、ここ数年の課題と傾向だと思ってください。特にウェブサイト(オンライン)での情報開示ではこれらは顕著なように思います。というわけで、まとめます。

1、ファインダビリティ

情報のみつけやすさは重要です。最近の大手上場企業はサステナビリティ情報開示に力を入れる企業も増えており、サステナビリティ報告(ウェブ・冊子)だけではなく、統合報告でも膨大な情報が開示されています。網羅的でボリュームのある情報開示は素晴らしいです。

しかし、そのプロセスで問題が出てきました。情報量が多いがために、読者が必要とする情報にたどり着けなくなっているのです。今までは「情報量が多い」は常にポジティブな評価でしたが、それがある許容される点を超えると情報が見つけにくいというネガティブな評価に変わってしまうようになりました。まぁ、どちらもわかります。しかも、専門家の評価機関のアナリストでさえ見つけられない事例が増えているのでまったく笑えない状況なのです。

また、最近、いくつかの統合報告書のアワードや有識者のコメントで、ページボリュームについて言及がありました。最近の統合報告書は分量が多く読み込めない、と(200ページの統合報告とか読者を馬鹿にしてるよねレベル)。企業側としてはあれもこれも盛り込みたいし、第三者評価などで大学の先生から指摘を受けて、そのまま指摘箇所を追加したりで、ページ数が多いと。

評価機関やアワードの選考委員ならまだしも、投資家が100ページ以上ある統合報告書を表紙から裏表紙まで全ページを見ますかね?たとえば、あなたは紙の新聞を読む時どのように見ますか?全ページ見ませんよね。そういうことです。情報の質は受け手が決める、です。どんなに良い活動や開示があっても、見つけられなければ“存在しないと同じ”です。先進企業はただでさえ情報がたくさんあるので、特に意識してマテリアルな項目を重点的にアピールしたいところです。

そのためには統合報告書だけをみていてもダメで、サステナビリティ・ウェブコンテンツやIRウェブコンテンツなどを含めたコーポレートコミュニケーション全体での開示を見直しましょう。

2、コネクティビティ

財務と非財務の統合された情報開示は、特に統合報告で求められる考え方ですが、そうなるとサステナビリティ報告でも当然重要なファクターとなってきます。

サステナビリティ推進活動は、自社の経営課題と社会課題の両方を解決する取り組みでなければなりません。抽象的にいうと「経済価値と社会価値の同時創出」のような感じでしょうか。そのような目標が立てられているか、が問題です。脱炭素が重要だからと言われて、ではがんばります、みたいな話を聞きたいのではありません。脱炭素が、自社のどんな経営課題を解決できるのかを教えろ、ということです。それこそが、統合報告で求められることです。

ここまできてはじめて「非財務の主要KPI」になります。多くの企業の統合報告に書かれている主要非財務KPIは、財務へのインパクトがほとんど示されていません。因果関係を証明するのは非常に困難ですが、それでもその数字がなぜ主要KPIなのかの解説は必要でしょう。

非財務領域の活動をどのように財務へ結びつけられるか、ESGが戦略とビジネスモデルに、どのように結びついているかを示す。また、既存事業をSDGsの17のゴールでマッピングするだけではなく、事業ポートフォリオの展開にも紐づけている、などなど。まさに「短期と長期」「非財務と財務」「データとストーリー」など、時に相対する自称を結びつける報告こそが統合報告の醍醐味です。理想は。(それが大変なのは重々承知です)

で、これらの矛盾するような事柄をまとめるに共通点が必要ですよね。事業活動のすべてには「価値」という要素があるので、ここで「価値創造」という視点でまとめると良いのです。非財務と財務をむりやりつなげようとするからうまくいかないのであって、これをどちらにもある価値という視点でまとめるのです。ちなみに、SASBとIIRCの統合後団体名はバリューレポーティング財団だそうで、まさに統合報告は企業の価値について伝えるバリューレポートであるべきと考えています。

とはいえ、「財務は結果」「非財務は要因でありプロセス」であります。だから、コネクトさせて説明できるのです。統合報告書作成を通じて、部門を超えた統合思考が育っていくため、より本質的な議論が社内で進むことを期待しています。

3、リアリティ

リアリティって重要ですね。とある勉強会で情報開示に詳しい某先生も言及していました。つまり、最近の情報開示は綺麗事が多いよね?と。高い目標をもつのはとても重要ですが、実務や成果をみても、それが実現される理由が見えてこないのです。

サステナビリティ報告に必要なのは「リアリティ」です。どうみても実現不可能な目標やビジョンを掲げる企業が多すぎます。高い目標を目指すことは大切ですが無謀と挑戦は違います。そこにリアリティがなければ読者を説得できません。

長期視点が必要なのに、誰も明日のことすら予想できない世界で10年後から50年後の予想と目標を立てるのが不可能なことは誰でもわかっています。投資家などは特に顕著で、知りたいことは作り話ではなく実話なんですよ。

だから、最近のサステナビリティ報告でも統合報告でも言われてるのは「具体性」です。どんな目標を設定してもいいけど、そこまでの道筋を“具体的に”教えてくれと。実現できる組織づくりができているのか、エビデンス(データ)はどれくらあるのか、その夢を実現させる人を教育できているのか、リスクと機会を整理できているのか……などなど。

この分野は特にふわっとした言論になりがちなので、具体性が特に重要です。上場企業であれば、価値創造に関する具体性はとてもとても重要です。たとえば「価値創造を図る前提としての課題設定力や経営者の先見性」「価値創造プロセスの持続性やマテリアリティに関する優先順位の有無」「実際の価値創造を支える財務と非財務の整合性や一貫性」などです。

コンテンツ制作のポイント

統合報告書でもサステナビリティレポート(サステナビリティサイト)でも、ステークホルダーエンゲージメントをしてフィードバックを取り入れなければなりません。それをしなければ、企業と制作会社の自己満足な作品が出来上がるだけです。読者不在の報告書って何か意味ありますか?

また、昨今の指摘で、レポーティング内で“定義のゆらぎ”があります。まずはこれも気をつける。CEOとCFOの「企業価値」や「サステナビリティ」の意味の捉え方が違うのでは、と感じる場面も多い。とくに「価値」は人によって全く異なる解釈もあるので注意しましょう。

他にはサステナビリティサイトのコンテンツ・トップページに「CSR/ESG/CSV/SDGs/サステナビリティ」という比較的に類似する概念が表記されているとか。専門家でさえ怪しいのに、普通の読者が「CSR/ESG/CSV/SDGs/サステナビリティ」の概念の明確な差を知っているわけないので、そんなハイコンテクストなコンテンツやめましょうよ。

日本で統合報告書を500社以上が発行していると言われていますが「玄人向けの統合報告書」と「マルチステークホルダー向けの統合報告書」がありますし、それだけでもよくわかりません。つまり、特に統合報告書の「制作方針(制作コンセプト)」は重要ですということです。

いわゆる制作コンセプトは、コロナ禍の中で時間がうまくとれず、社内や制作会社とも本来最も時間を使うべきコンセプトづくりができてない会社も多いでしょう。ただ、これはとても重要なことなので、次の報告書こそはこの議論を軽視せず突き詰めてください。

私が考える、統合報告書やサステナビリティレポートのミッションの一つは「来年も読んでもらえるものにすること」だと思います。この会社はまだまだ良くなる、来年の活動報告も楽しみだ、と思ってもらうことです。結局、人間なんて感情の動物であり、どんなに非合理でも、義理人情で物事を判断しがちなものです。感情にもしっかりアピールしましょう。

その統合報告書は、誰の、どんな行動を引き出せたか。美しいデザインで日本語としても美しくても、企業に好影響がでない報告書に意味はありません。その統合報告書を読んだ読者に、どんなことを覚えてもらうか。統合報告書で絶対伝えたい一言は何か、を明確にしましょう。

まとめ

本記事では、サステナビリティ報告および統合報告における開示のポイントをお伝えしました。

本記事でお伝えした内容はかなり難しい話ではあります。読者の皆様から「それができれば苦労しないよ」との声が聞こえそうですが、今より一歩先の評価なり成果なりを求めるならば、これらのことを意識して見てください。すでに相応のCSR/ESG評価を得ている企業様のコンサルティングのお声がけをいただくことがありますが、このあたりが実は徹底できていないということがよくあります。特に統合報告書を発行するような企業(600社くらい?)は、今後さらに厳しい情報開示合戦となるので、このあたりは確実におさえておきたいところです。

ということで参考になれば幸いです。

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