統合報告書制作でヒントにすべき統合報告書アワード2020

統合報告書制作

統合報告書のトップ企業

統合報告書関連のアワードは、年末〜年初めに集中しているため、今年もこのタイミングで、統合報告書関連の最新動向をまとめたいと思います。

数年前と違い、統合報告書は本来の想定読者である株主・投資家向けの冊子として進化しており、上場企業でもCSR部門ではなく、IR・経営企画・広報などの部門が制作を担当するようになってきたと感じています。まぁ、投資家向け媒体なのでIRが主導するのは当然ではありますが。

では、CSR部門は統合報告書に関与しなくて良いかというと、さすがにそうもいきません。ESGとは言いますが、活動自体はCSRであり、IR部門と連携して制作をしていく必要があります。ただ、現実的には、売上1兆円の企業でもCSR担当もIR担当も専任は数人というところもあり、各々のタスクで手一杯で連携どころではないことも多々あります。(縦割り組織の弊害という面もあり)

ですでの、まずはCSR担当者側としても“良い統合報告書”を知っておく必要があります。評価の高い企業のものをベンチマークすべきという意味で、です。

本記事では、いくつかの統合報告書(一部はCSR報告書)に関するアワード等を確認しながら、2020年発行分の統合報告書のヒントにしてみてください。

環境省|第23回環境コミュニケーション大賞

>>第23回環境コミュニケーション大賞(2020年2月)

◯環境報告大賞
コニカミノルタ CSRレポート2019
コニカミノルタ 環境報告書2019

◯気候変動報告大賞
丸井グループ 共創経営レポート2019
丸井グループ VISION BOOK 2050

GPIF|優れた統合報告書、改善度の高い統合報告書

>>国内株式運用機関が選ぶ「優れた統合報告書」と「改善度の高い統合報告書」(2020年2月)

◯4機関以上の運用機関から高い評価を得た「優れた統合報告書」
日立製作所
キリンホールディングス
伊藤忠商事
三井化学
丸井グループ
住友化学
花王
三井物産
MS&ADインシュアランスグループホールディングス

◯GPIFの運用機関が選ぶ「優れた統合報告書」(複数の運用機関が選定)
大和ハウス工業
アサヒグループホールディングス
味の素
J.フロント リテイリング
東急不動産ホールディングス
三井化学
三菱ケミカルホールディングス
積水化学工業
野村総合研究所
中外製薬
ナブテスコ
荏原製作所
日本精工
オムロン
ソニー
横河電機
シスメックス
デンソー
三菱UFJフィナンシャル・グループ
日本郵船
東京電力ホールディングス
カプコン

WICIジャパン|統合報告優良企業表彰

>>第7回WICIジャパン「統合報告優良企業表彰」(2019年11月)

◯統合報告優秀企業大賞
日本精工

◯統合報告優秀企業賞
アサヒグループホールディングス
コニカミノルタ
中外製薬
丸井グループ

◯統合報告奨励賞
日立製作所

日経|アニュアルレポートアウォード

>>第22回日経アニュアルレポートアウォード2019(2020年2月)

◯グランプリ
日立製作所

◯準グランプリ
MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス
中外製薬
丸井グループ

◯特別賞
ソニー
東京応化工業

各種調査

■レポーティングはウェブの時代に
23%のレポートはデジタル版のユーザーエクスペリエンスに最も重きを置いている。また、64%はレポートをPDF版で整理した上で、補足情報をウェブページに記載する手法をとっており、2017年調査時の44%からの増加が見られる。一方、PDFでの報告書だけを掲載する企業は減少してきている。
WBCSD|Reporting matters 2019: regulators and standard setters urged to simplify and align the corporate reporting landscape

CSRウェブサイト格付け「サステナビリティサイト・アワード2020」
「統合報告書発行状況調査2019 中間報告」を公表しました
日本企業の統合報告の取組みに関する意識調査2019
統合報告書分析レポート「3年で見る統合報告書の変化 -業界動向・ポジション-」
統合報告書分析レポート「-統合報告書とCSR報告書の併刊-」

所感

私はESG投資やIRが専門ではないので、詳しく知りたい方は引用先のプレスリリース等をご確認ください。とはいえ、CSR報告書も統合報告書も、結局は「具体的かどうか」がよく求められるようになってきているのは間違いありません。他には例えば下記5つのポイントも、色々な人が同じように指摘しているところです。

1、経営者/CEOメッセージ。経営者≒企業であり、トップの発言から企業姿勢がわかるから。
2、投資戦略。持続的成長のために何に投資しているか。
3、リスクマネジメント。なんだかんだでしっかりしているところは開示も豊富。
4、ESGの実践的な中身。形式ではない具体的な行動。
5、「1〜4」が、ビジネスモデルと関連付けられているか。

SDGsでもESGでも何でもいいですが、企業がどんなESG課題を認識し、その課題解決のためにどんな行動をとり、その結果どのような成果が生まれたのか。この「課題認識 → 解決行動 → 活動成果」のプロセスを示せ、というのはCSR/ESG報告の基本です。それが財務的なKPIであればそれを示せばいいし、非財務KPIであれば、それを示せばいい。それだけです。(それだけが難しいのは重々承知してます)

統合報告書だけではないですが、「ステークホルダーのニーズ」と「自社がアピールしたいこと」が合致しているレポートが一番よいです。前述した評価の高い企業は、この流れにはまっているから評価されているように思います。

そもそも、企業がなぜ統合報告書を作らなければならないかといえば、企業がステークホルダーに、何らかの「報告」をしなければならないからです。企業とステークホルダーとの間に利害関係がありますので、ステークホルダー(ここでは投資家)が、企業がどのようなことをしているのかを常に気にしています。ですので「課題は認識しており解決策も実行中です(何も問題はありませんよ)」「ガバナンスを強化し常に改善しています(倫理的な事業活動していますよ)」というレポーティングをするために作られる、というわけです。

理想的な統合報告書は「環境・社会面の影響を考慮し、このような財務的判断を下した」というストーリー展開になるべきです。無形資産の価値の見える化、エビデンスとしてです。統合報告の極論は「主要ビジネスモデルのESG課題を特定し、その対応を経営戦略の中にどう取り込んでいるのかを説明せよ」ということです。ESGの考慮は負の外部性 (環境・社会問題等)を最小化し、市場全体の持続的かつ安定的な成長に不可欠ですので、投資家もそれを知りたがるという。

まとめ

今年の評価では、日立製作所・丸井グループ・中外製薬がずば抜けていました。国内全上場企業は、何を持ってしてもまず3社の統合報告書をベンチマークしましょう。

で、次のレポーティングの課題は、統合報告書の浸透によって企業の非財務情報開示は今後どう変わるのか、あたりでしょうか。これは兆候として明確でして、答えの一つは「CSRウェブコンテンツが大きく変わる」です。統合報告書を非財務情報開示の主軸にすることで、より細かいデータや情報はウェブに移行させる企業が増えているということです。

「統合報告書とCSR報告書の棲み分け」の議論はこの5年程度でひと段落していて、次の5年の論点は「統合報告書とCSRウェブコンテンツ」なのかと予想しています。これは、主宰している勉強会や第三者評価では参加者/お客様にお伝えしていますが、なかなか厄介な問題なのです。

CSRウェブコンテンツにもESGやIR要素も必要ですが、特化させすぎると、IRウェブコンテンツとCSRウェブコンテンツの差もなくなってしまい…。のような課題です。唯一絶対の解決方法はなく、個別企業ごとの対応にはなりますが、ヒントがあるとすれば「リンケージ(関連付け)」と「インテグレーテッド・シンキング(統合思考)」でしょうか。詳しくはまたどこかで。本記事が統合報告書制作のヒントになれば幸いです。

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