ユニークなCSR報告書事例はトランプカード?

CSR報告書

ユニークなCSR報告書

今回はユニークなCSR報告書の事例を紹介したいと思います。

基本的に当ブログでは事例紹介はしなくなりましたが(事例を伝えても解決できる課題はほとんどないからです)、今回のはかなりユニークだったので紹介させていただきます。「独自性の高いCSR報告書ランキング」があったら1位になるんじゃないか、というレベル。

丸亀製麺で有名なトリドールという企業の「トランプ型CSR報告書」です。社員数十人の中小企業なら何やっても“面白いね”だけですが、上場企業がこれをやっていいの? という印象。

実物のトランプはとある勉強会で担当者の方からいただきました。本記事では、統合報告とCSR報告のあり方を含めてめて、事例からの学びをシェアします。

トリドールのCSR報告書

CSR報告書
CSR報告書

このトランプは、厳密にいうとCSR報告書ではないのですが、少し前に流行ったノベルティみたいな軽いものではありません。「楽しみながら、当社の活動を知っていただければ幸いです。」とあるように、外食産業なのでBtoC向けなのかもしれません。

トランプの内容は、いわゆるCSR活動全般の紹介があります。いわゆる統合報告にあるような内容はほとんどありません。内容的にはCSR報告書のダイジェスト版のようなポジションですね。詳しくはウェブサイトでご確認ください。

>>トリドール|サステナビリティサイト

CSR報告書の意義

東証一部企業になると、体裁を気にしすぎてオリジナリティのあるCSR活動やCSR情報開示がしにくいし、最近では、「CSRコンテンツのIRコンテンツ化」といいますか、IRコンテンツがあるのに、CSRコンテンツでも施局的にESGをアピールする企業が増えています。

IRとCSRは本来的には、想定読者となるステークホルダーが異なる(IRは投資家、CSRは全ステークホルダー)ので、CSRコンテンツのIRコンテンツ化は上場企業的には良いように見えますが、開示戦略として目的の手段化が起きているというか、ちょっと危うく思います。

たとえば、あるESG評価の高い企業は、CSRコンテンツのESG情報も充実していて評価機関の評価は高いのですが、従業員へのCSRの浸透はほぼできていないし、従業員と労働問題で訴訟を抱えているレベルであり、現場は結構“最低”です。評価機関を意識しすぎて、他のステークホルダーをないがしろにしている企業は結構あるんですよね。このあたりは深い話なので別の記事にまとめたいと思います。

でもCSR報告は本来的には専門家や評価機関のためというより、主要なステークホルダーである、従業員・顧客・学生・取引先あたりが想定読者になるわけで、トリドールの例のように振り切って面白く見せるのもいいと思うのです。当然、冊子ではないので閲覧性は低いし、グローバルなレポーティング・ガイドラインに準拠もしていないので、専門家や評価機関の評価は低いでしょうね。これを“従来のCSR報告書”とするならば。

そもそものCSR/サステナビリティ報告書は冊子版を発行しない企業も増えているわけで、CSR情報をウェブコンテンツに集中してしまえば、印刷媒体としてはインパクトや独自性を目指すのもありですよね。本来の機能であるべき点を振り返り、「そもそも、我々は誰のために、どんなCSR情報を開示し、どんなリアクションを期待するのか」を改めて明確にすべきですね。

統一化される情報開示

CSR報告ではなく、ESG情報や統合報告書は、内容のオリジナリティは評価されても、メディアというか冊子形式自体の独自性とか追求できるものではないんですね。IIRCなどのガイドラインに内容をよせればよせるほど独自性はなくなります。また最近では、ESGインデックス/レーティングの評価項目に合わせて開示インデックス(目次)作りをしている企業も増えています。こうしていくとさらに、独自性のある情報開示はなくなっていきます。

有名なのはDJSI、MSCI、FTSEとかの項目に合わせる開示ですね。上場企業で組み込みが狙える企業であれば、まぁ当然の試みではあります。でも問題は、評価機関ではないステークホルダーにその方法が適切なのか、と。

タクソノミーを含めて、世界では共通指標を決めたり、国際ガイドラインが統一化の方向に行ったりなど、情報開示は統合される空気感がありますが、どこまでいってもESG的な視点であり、非財務情報全般の話ではありません。フレームワークとして情報開示が標準化されると、汎用性が高まる分、個別企業にあったものでなくなってしまう可能性があります。統一化された情報は、すべてのステークホルダーが求めていることですか? と。

広告的なCSR開示

最近のCSR報告は“広告的”な内容になってきているように感じています。多くの場合、広告をわざわざ見たい人などいません。つまり、コンテンツの広告感を消して、人や想いを前面に出す必要があるのではないか、と。

情報開示全般において、CSRをアピールしたがる企業が増えたのは皆さんも感じているかと。経営的にはCSRだろうがなだろうが、アピールすることは合理的なので間違いではないのですが…とはいえそれが正しいとは思えないし難しいところです。

要は、経済合理性を追求するビジネスシーンにおいて、外部不経済というか、社会問題を誘発してきたからもっと経済的視点ではない指標・視座でビジネスモデルを見ていこうという話だったのに、結局また経済合理性に視点が戻ってしまうという。「ミイラ取りがミイラになる」的な話です。CSVの功罪ですね。

CSRは、経済合理性とは違う価値の軸を示したものであって、プロモーション・マーケティング・ブランディングなどを全面に出したいなら、ほかでやってくれと。

まとめ

結論としてトリドールの真似をしろということを言いたいのではなく、今一度、貴社のCSR報告書の「5W1H」を見直していただき、CSR情報の“本当に届けたいステークホルダー”をより明確にすることがまず必要なのでは?というものです。

ウチのCSR報告書はこんなにユニークだから紹介させてくれ!という企業がいれば、私も見てみたいので、ご連絡ください。久しぶりにユニークなものを拝見しましたので紹介させていただきました。

ちなみに、今は滅多に個別企業の報告書を紹介しないので、ウチの事務所に冊子を送っていただかなくて結構です!特に複数冊いただいても破棄するだけなのでもったいないです。だったらメールでURLだけください、という。

いずれにしても独自性は重要です。貴社が日本社会に存在する意義を積極的にアピールしていきましょう。

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