コーズマーケティングはなぜ廃れたのか–その問題点/課題は?

コーズマーケティングはどこに?

2015年9月以降にSDGsが世界的に浸透し、今までよく耳にしていたCSR界隈のコンセプトの“淘汰”が始まっています。

そのコンセプトの重要度はさておき、CSVやBOPビジネスなど、SDGs前はコンサル企業が特に普及に努めていましたが、最近ではその普及スピードに陰りが見え始めています。そして、最近特に聞かなくなったのが「コーズマーケティング」です。コンセプト自体は昔からあるんですけどね。

コーズマーケティング(コーズ・リレーテッド・マーケティング)とは、主に「特定商品の売上の一部をNPO等に寄付する、寄付付き商品・サービスの販売および仕組みづくり」を指します。世界的には文字通りの「コーズ(大義名分)」を軸とした「大義のある理念に忠実なマーケティングおよびビジネスモデル」という意味で使うこともあります。

コーズマーケティングは、成果報酬型となる売上連動の寄付形式であるため、取り組みのハードルは低いのですが、大抵が期間限定、もしくは商品・サービスを限定するため、たいした寄付金額に至りません。だったら遠回りせずにその金額寄付した方がよかったじゃん、と。

さて、何ごとにも課題はあるものですが、コーズマーケティングはなぜ日本では盛り上がらなかったのか。いくつかの課題を含めて考えてみます。

課題1:成果および期間

大きな問題の一つが「成果が小さい」点でしょう。そもそも寄付は「富の再配分」であり、意義は生み出せますが新しい価値を生み出せないからでしょう。(バリューチェーン全体となると成果がある例もありそうですが…)それと実施が限定的な点です。例えば対象商品が1つだけ、期間が1ヶ月だけ、など。

コーズマーケティングを含めたCSR活動のインパクトは時間軸が通常のビジネスとは異なります。つまり、中長期でその成果が最大化されるように行われているので、短期での経済的な成果は重要な指標とは考えません。

世界一成果を生んでいるとされる、Apple社「(PRODUCT)RED」なんて「1億6,000万ドル」という途方も無い数値ですが、11年も継続してやってます。ボルビックの企画もそうですが、10年継続してナンボなところはあります。

通常のビジネスでは当日〜数ヶ月という期間で何かしらの成果を産まなければなりませんが、CSRでいうと、数年〜数十年という期間での成果が求められます。今でいえば、SDGsのゴールである2030年に成果を最大化する(課題解決に貢献する)ことが求められています。

特に昨今のCSR活動では「どれだけ企業価値向上に貢献できるか」が成果指標として求められています。「100万円売り上げたから3万円をNPOに寄付します」ではなく「100万円の売り上げすべてが社会課題解決に貢献しています」というほうが、社会的な成果も大きいはずですよね。当然、企業サイドへのリターンも大きくなります、と。そうなると、従来からコーズマーケティングの問題点となっていた社会的インパクトが小さいという課題も、理論上はクリアできるはずです。

やはり最終的な成果となるアウトカムやインパクトという指標を最重要視しない、文字通り経済的指標優先な販促およびマーケティングで終始してしまっている事例がほとんどだからでしょう。そもそも、今の時代であれば、アウトカム/インパクトを求めるなら、コーズマーケティングという選択肢はないと思いますが…。

課題2:リスクがメリットを下回る

炎上多発の時代、最悪の事態に備えるブランドたち:コーズマーケティングの見直し広まる」という記事でもありますが、安易なコーズマーケティングをしてきた結果、炎上が相次いでおり、取り組みに見合ったリターンが得にくい状況も原因の一つでしょう。

マーケティングのプロも、CSRやサステナビリティの知見は“素人的”なことも多いため、上記のような問題が起こります。センシティブなコンセプトを取り上げることも多いので、私は、コーズマーケティングこそ、有識者をプロジェクトメンバーに入れるべきと思うのですが…。

今後のコーズマーケティングは、寄付付き商品の販売ではなく、社会的大義があることが前提ですが、自社のミッション・ビジョン・バリューの実践を強く意識したマーケティングに進化すべきと考えています。これはコーズマーケティングという枠組みにとどまらず、CSVやSDGsにもつながる価値創出および企業価値向上に貢献するマーケティングとなるでしょう。

究極的なコーズマーケティングは、すべてのビジネスモデルおよびサプライチェーンの社会性を高め、すべての事業活動を“ソーシャルビジネス化”することでしょうか。縦割り組織の日本の大企業では不可能なのですが、理想という意味では、これがコーズマーケティングの最終形態ですね。

まとめ

CSR界隈ではレジリエンス(柔軟性)という重要なコンセプトもあります。サステナブルで存在するには、社会の変化に合わせて自分たちも柔軟に変化していく必要があります。まさにコンセプトも流行り廃りがあります。

コーズマーケティングも2000年代後半であればまだしも、2010年代後半の現代では、社会的な価値創出のための有効な手段ではなくなってきているのかもしれません。成熟期を迎えずに衰退期に入ってしまった感のあるコーズマーケティングですが、やはり今実施するとしたら、そのままのビジネスモデルではなく、もう一歩踏み込んだり、インパクトが出せる方向を模索すべきなのでしょう。

コーズマーケティングで稼いだ「信頼・信用」はめぐりめぐって競争力に貢献します。今の「目先の自社の利益」だけを大事にするか、少し努力して将来の「目先の利益」を継続的に確保し続けるのか。このあたりのKGI/KPI設定も、ポイントの一つでしょう。

改めてですが、コーズマーケティング自体は有意義な事業活動です。できるのであれば、すべての企業が取り組めばいいと思います。安易な取り組みを行わず、社外の有識者も巻き込みながら適切なマーケティングをしていきましょう。

失敗事例、成功事例、問題点や課題などについては、以下の過去にまとめた記事をごらんください。何かしらのヒントになるかもしれません。

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