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ステークホルダー・エンゲージメントにおける3つのポイント

CSRとステークホルダー・エンゲージメント

ステークホルダー・エンゲージメントは、CSR活動において非常に重要な要素の1つです。

レベルの差こそあれ、CSRで有名な企業でも中小企業でも、このカテゴリに課題を感じている担当者は非常に多いです。

7〜8年この領域で仕事をさせていただいてますが、最近、エンゲージメントの質は「ステークホルダー視点の有無」で決まるのではないか、という仮説が信憑性を増してきました。

ステークホルダーが企業に求める価値を明確にすること、ステークホルダーの情報ニーズを的確に拾い上げること。ステークホルダーの価値観に気づかない限り、企業の評価が上がることはないし、エンゲージメントが起こることはないでしょう。

さてそんな中で重要なのが情報開示です。特にウェブでは直接的にエンゲージメントにつながります。すでにデータがあるのに開示していないケース(たいした数字ではないので上層部承認が取れない)、データを社内で収集できていないケース(そもそもKPIではないため収集していなかった)、そもそもCSRを重視していないケース(CSRの理解が乏しい経営者がいる企業)、など差は色々ありますが、しなくてよい理由にはなりません。

というわけで、本記事ではエンゲージメントという視点で情報開示における企業のあるべき姿をまとめてみます。

1、ステークホルダーの特定

私は「マスが対象のコミュニケーション」ではなく「属性を絞った対象とのコミュニケーション」がCSRコミュニケーションには必要だと思っています。それは、ステークホルダーごとに情報ニーズが異なるからです。投資家と顧客(エンドユーザー)が同じ情報を欲しているわけがありません。ここが難しいのですが、ステークホルダーはパブリックな存在ではありますが、パブリックそのものではないというか。

つまり、ステークホルダーを「マルチ・ステークホルダー」という形にまとめないことが必要なのかもしれません。CSR文脈においてマルチ・ステークホルダーという単語を使う時は“何も考えていない”と言っているようなものです。マルチ・ステークホルダーとは“全人類”のように、とても幅の広い概念でありターゲットしては不適格な枠であります。バウンダリー特定ができている企業のほとんどは、マルチ・ステークホルダーという単語を使っていないですよね。

こんな話は当たり前すぎなのですが、実際にはあまりコンテンツ(報告書、ウェブ)の制作現場で議論されていないように思います。それで、CSR活動の成果が出ない、エンゲージメントが進んでいない、と言われても何もアドバイスもできません。表面的な課題に捉われすぎると根本的な課題が見えなくなるので注意しましょう。

2、ステークホルダーの認識と関係性

人は知らないもの興味を持ちません。いや“持てない”と言ったほうがいいでしょう。企業の価値が伝わることこそが「価値」なのであり、ステークホルダーに伝わっていない価値は、ステークホルダーに価値と認識されません。視界に入っている可能性はありますが、価値として認識されない。これは社会に必要とされていないことにもつながります。そういう意味では、ステークホルダー・エンゲージメントにとって関係性は非常に重要です。

初対面の人にいきなり「結婚してください」といわれても多くの人はOKしないでしょう。それなのに、CSRコミュニケーションとなるといきなり「ステークホルダーに情報を届け、企業の存在価値を理解していただき、エンゲージメントを作る」なんておかしなことになります。振り向く人がゼロとはいいませんが、そこにいたるまでの関係性を構築することも重要です。

従業員というステークホルダーはまさにここが重要だと思います。CSRが従業員にとってメリットがない(当事者意識を持てない)のに、能動的に社内浸透していくはずがないのです。

自分たちのCSR活動を自分たちが一番知っていても意味がありません。本当に知るべきは“ステークホルダーの興味”です。だからこそ、CSRの前提知識のない人たちに「どうやって自社のCSRを伝えるか」がとても重要になるのです。経営学者のピーター・ドラッカーもコミュニケーション(エンゲージメント)は受け手が重要と言ってますよね。

あと、BtoB企業はBtoC企業よりも社会からのプレッシャーが少ないことが多いです。しかしエンドユーザーを含めて社会との距離があっても社会的責任はBtoC企業と同じ大きさです。このあたりもちゃんと考えないと、ステークホルダー・エンゲージメントが“机上の空論”になってしまうでしょう。BtoB企業はエンドユーザーが遠いからこそより意識していかないと、ということです。

3、エンゲージメントの主語

最近、私がよく考えることは「ステークホルダー・エンゲージメントの主語は誰か」という話です。

CSRの主語は文字通り「コーポレート(企業)」であり、ステークホルダーが主軸の視点ではありません。ですので、CSR活動によって、どのステークホルダーが、どれだけ幸せになったのか見えにくい(成果や過程が不透明な)側面があります。だから昨今のCSR/ESGでは「成果」の開示が求められるのでしょう。

CSR活動は実はステークホルダーが主体となる活動であり、企業はその一翼といいますか、プラットフォームでしかないのです。ですので、特にエンゲージメントを重視するのであれば、ステークホルダーが主語になるコンテンツを作りましょう。エクセレントなコピーでいうと、CSR報告の主語を「私(自社)」から「あなた(ステークホルダー)」にする、ということでしょうか。「あなた」がいてくれたから「私たち」はこんな成果や価値を生み出すことができました、と。

CSR報告はただの「事業活動報告書」ではなく、「ステークホルダーへの価値提供についての報告書」であるべきです。そうなれば、少なくとも今よりステークホルダー目線が盛り込まれ、エンゲージメントに貢献しやすいCSR報告となるのは間違いありません。

まとめ

ステークホルダー・エンゲージメントは、CSR実務の中でも最大級の難易度だと思います。

エンゲージメント戦略作成→エンゲージメント方針発表→PDCA→アウトカム/インパクトの最大化、という戦略から成果までのすべてのプロセスと結果が求められるCSR活動ですから。

ステークホルダー・エンゲージメントって、概念や対応テクニックなどがメインで語られて、IR/SRのエンゲージメントは進んでいる印象ですが、他のステークホルダーとのエンゲージメントは“惨状”ですね。今一度、「自分たちが伝えたいこと」ではなく「ステークホルダーが知りたいこと」を中心に開示をしていく努力をしましょう。

というわけで本記事ではステークホルダー・エンゲージメントのポイントについて3つにまとめてみました。参考になれば幸いです。

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執筆者:安藤 光展[→プロフィール詳細]