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「いままでのCSR」と「これからのCSR」の違い

CSRのその先へ

2003年のCSR元年から、来年で15年です。この15年で大きく変化してきたCSRの概念ですが、この節目に新たなステップが必要かと思っております。

社会が大きく変化しており、従来のCSR論では企業はステークホルダーとの適切な関係作りが難しくなっているように思います。特にESG領域がそれが顕著ですね。

そこで「これからのCSR」について考えようというと「それってCSVですよね」と言われそうですが、CSVではありません。CSVはCSRと同じゴール(社会課題解決)ですが、マーケティング要素が強く本来のCSR活動のほとんどを網羅していませんので。

そこで本記事では、先日のセミナー「CSR/CSV情報発信によるデジタルコミュニケーション最新動向」でもほんの少しだけ話しをさせてもらったのですが、改めてCSRの定義というか現実的なアプローチ方法をまとめます。

これからのCSRコンテンツ

まずは経営論理ではなくコミュニケーションおよびエンゲージメントの視点から「いままでのCSRコンテンツ」と「これからのCSRコンテンツ」という枠組みでまとめました。

「自社のメリットが少ないCSR活動や情報開示はしない」「成果がでていない事まで報告しても評価を下げるだけ」このような考えの経営者は非常に多いです。その結果、現在、上場企業の三分の一程度しかCSR活動をまとめたコンテンツ(CSRウェブコンテンツ、CSR報告書、統合報告書など)を作っていないとされています。ステークホルダーの情報ニーズは無視でございます。

企業は法定開示書類を出してれば、任意開示書類はステークホルダーのプレッシャーがどんなにあろうとも出す強制力はありません。ですのでいままでは「自分が主語で一方的に情報開示できるコンテンツ」だけで説明責任を果たしていると言えた時代でした。

ただし、ステークホルダー(投資家含む)は、それだけでは企業を判断することが難しいとわかったし、日本政府や監督官庁も、より企業に情報開示を求めるようになってきています。世界では非財務情報開示の制度化(法制化)が顕著ですね。

たとえば、CSR関連情報は非財務情報と言われますが、これは文字通りの定義ではあるのですが、財務情報の裏付け(エビデンスやコンテクスト)だと理解すると、よりイメージがしやすいでしょう。ですのでCSR報告およびCSRコンテンツはただの「事業活動報告」ではなく、「ステークホルダーとの価値創出(インパクト)についての報告」であるべきなのです。

CSRの前提知識のない人たちに、CSRという単語で自社のCSR活動を説明しても理解・共感はまず生まれません。CSRの主語は「企業」であるためです。これからのCSRコンテンツは「ステークホルダーが主語になるコンテンツ」が求められています。

事業活動とガイドラインの“ただの対照表”は何の意味もありません。今後はCSR活動における成果や価値創出にコミットメントしましょう。課題解決への成果が開示できてこそ意味があります。具体的にいえば「〇〇の活動をしました」ではなく「〇〇活動で■■の成果を出しました」と報告しましょう。そうすることで、より成果につながる企業価値向上に貢献しうるCSRコンテンツとなるはずです。

これからのCSR

CSR活動は自社の成果ではなく、どちらかというと企業はプラットホームであり、ステークホルダーの成果になります。

ここ数年、日本の大手企業の不祥事が目立っていますが、CSR活動そのものは積極的に行っている企業が多いのも不思議なところです。表向きはステークホルダー・ファーストな事業展開をしていましたが、内側では従業員や取引先、そもそものコンプライアンスも無視し続けた結果なのかもしれません。

これからのCSRは、CSR活動だけが果たすものではなく、すべての事業活動に求められます。環境対応が完璧でも、特大のコンプライアンス違反をした企業を、CSRがすぐれているとは言えませんよね。

自社の利益を重視するのはわかりますが、その結果、社会/ステークホルダーに負荷をかけてもしょうがいないです。CSR活動はステークホルダーの利益追求や課題解決を目指すものです。その結果、信頼性・透明性向上、ブランド価値創出、ひいては企業価値向上につながる、何かしらの「対価」をステークホルダーから得られるのです。この利益の順番が実はCSRでもっと議論されるべきと感じています。

パーパス・オリエンテッド・アプローチ

ステークホルダーに自社のCSR活動を理解してもらうには、日々の活動の“必然性”をコンテンツ化する必要があります。

つまり、ステークホルダーに「なぜ自社がこのようなCSR活動をしているのか」という姿勢を知ってもらい共感してもらう必要があります。そのポイントとしては、自社に“軸”となる基本理念が必要です。

これをCSR界隈では「ミッション、ビジョン、バリュー」「パーパス」「ホワイ(Why)」と表現されます。CSR活動は、企業の存在意義のための一つの事業活動にすぎません。そもそもCSR活動のミッションというゴールがないのに、どうやって前に進めるというのでしょうか。これは、多くの企業のCSR活動は“後付け”であり、「How」や「What」など目先のプロセスから始めようとしているので、必然性も見えないしステークホルダーの共感もえられにくい、ということなのでしょう。

CSRが企業経営において“後付け”でもいいので、ここでいう第三者の専門家を交えて「目的さかのぼり思考」の元、論理的に活動プロセスを整理する必要がありますよ、ということです。共感なくしてエンゲージメントなし、です。

ですからステークホルダーへの説明責任として、「我々は〇〇というミッションの元、日々の事業活動をしている。だから今行っているCSR活動はミッションを達成する重要な施策なのです」と開示する必要があるのでは、と。

パーパスという、そもそものCSR活動の動機を明確にすることによって、よりステークホルダーの理解や共感を得ることができるし、ステークホルダー・エンゲージメントも適切に行えるというわけです。

自分に質問してみてください。「自社はなぜCSR活動をしているのだろうか」「今行っている活動に必然性はあるのか」と。

まとめ

「いままでのCSR」だろうが、「これからのCSR」だろうが、CSVだろうが、サステナビリティだろうが、企業の指し示す方向性は同じで「社会課題の解決」です。

社会課題解決は、現代社会において社会/ステークホルダーのニーズです。当然、企業は社会やステークホルダーのニーズを満たすことで対価を得ることができます。経済的価値(貨幣価値)で換算できる成果ではないかもしれませんが、自社の利益だけではなく、他者の利益追求をサポートしてこそ、社会に必要とされる存在になれるのです。

CSRの情報開示も活動自体も次のステージに行くために、本記事で紹介したフレームワークで、来年度に向けて頭の体操をしてみてはいかがでしょうか。

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執筆者:安藤 光展[→プロフィール詳細]