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企業寄付の「企業版ふるさと納税」でどのステークホルダーが幸せになれるのか

企業版ふるさと納税

企業版ふるさと納税

2月5日に地域活性化施策の「地域再生法の一部を改正する法律案」(改正地域再生法)が閣議決定、4月14日の衆院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立しました。

この法律では「地方公共団体が行う地方創生プロジェクトに対する企業の寄附について税制優遇措置を創設」として、「地方創生応援税制」(通称:企業版ふるさと納税)が盛り込まれました。

内閣府としては「地方創生の取組をさらに加速化させていくためには、地方公共団体が民間資金も活用して地方版総合戦略に基づく事業を積極的に実施していく必要があります。そのため、地方公共団体が行う地方創生事業に対する法人の寄附を促す制度を創設しました。」というメッセージを出しています。ふーん。

内閣府地方創生推進事務局|地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)

企業寄付の動向

Sankeibizの『企業版「ふるさと納税」改正法が成立 寄付対象事業、夏にも決定』によれば、対象事業の第1弾が夏ごろに決まる見通しで。となると、先日のニトリ事例は一発目?ちなみに、企業が多い東京都などに偏る税収を地方に移すことで地方創生を後押しするのが狙いだそうです。

国は、自治体への企業寄付の総額が現状の年間約200億円から2倍の約400億円に増えると見込む、とのこと。そうですか。2倍ですか。

ちなみに、税収が多い東京圏(東京、埼玉、千葉、神奈川の4都県)の一部自治体は寄付を受けられないらしいです。地方自治体から、大手企業への寄付営業が今後増えるんでしょうね。そのあおりをうけて飛んでしまうNPOがでてきそうで、寄付比率の高いNPOでブルブルしている人は多いかもしれません。

ふるさと納税の課題

例えば大阪府に住んでいる人が、東北のある地域にふるさと納税した場合、東北の自治体にはお金が入りますが、大阪府にはお金が入りません。しかし、ふるさと納税した人は、大阪に税金を払っていないにもかかわらず、税金を全額払った人と同じ行政サービスを受け続けることができます。こうした行為が行き過ぎれば、税収を奪われる自治体のサービス水準が低下したり、公平性が保てなくなるという弊害が発生することになるでしょう。
地域活性化の効果に期待!? 企業版ふるさと納税とはどんな制度?

これは個人・法人問わず、起こりうる課題です。すでに税収が落ちている自治体もあると思います。どんなに地元で公的サービスを充実させても、他の自治体に税金が流れたらやりきれないですね。受益者の課題は寄付行為にかかる大きな問題なので、企業寄付の場合は特に注意する必要があります。

しかも、内閣府の資料を見ると、自治体側への審査(?)もあるようで、KPIやPDCAまできちんと設計してない所には寄付できないようです。というか、自治体で計画性のない活動をしている所なんかあるわけな……いやあるか。この仕組みには色々課題がありそうですよ。

事例:ニトリ

朝日新聞『ニトリ、夕張市に5億円寄付へ 企業版ふるさと納税で』によれば、家具大手のニトリホールディングス(HD)は20日、4月に新設された「企業版ふるさと納税」制度を使い、創業地・北海道の財政再生団体、夕張市に総額約5億円を寄付する方針を明らかにした。寄付は2016〜19年度にかけて行われる見通し、とのこと。

もともと、支援活動をしていてつながりがあったので決まったようです。やるやん、ニトリ。次の家具はニトリで買おう。

今回のニトリのような形で、すでに自治体と積極的な支援プログラムを実施している企業は、導入を検討してもいいと思います。もちろん、規定があるのですべてのプロジェクトに企業寄付できるというわけではないようですけど。

NPOと自治体はライバルになる?

今後、想定される事態は何か。1年目は大きな動きが起きるわけではないし、ニトリのように数億円単位の支出がいくつかニュースになるくらいでしょう。僕が今後の変化として心配するのは「NPOへの寄付」ですね。

たとえば、ニトリは「社会貢献事業」というホールディングスのページで、「株式会社ニトリは大学での寄附講座や大学との共同セミナーの実施、各種基金など積極的な社会活動に取り組んでいます。」としています。メセナ(文化保護活動)、フィランソロピー(災害復興支援、NPOへの寄付)、などを行なっているとしています。

ニトリは、元々、北海道の会社なので北海道での様々な社会貢献活動に以前から積極的です。地域活性化という企業版ふるさと納税の主旨にしっかりと乗ってます。でも5億円も出しちゃったら、他の活動へのリソース配分がなくなったりしませんかね?つまり、今まで間接・直接的に寄付等の支援を受けていたNPOなどが、寄付をもらえなくなると。

ここ数年、企業寄付は7,000億円前後の横ばいなのですが(※)、今後も規模は当面同程度と予想されますが、その内訳が大きく変わる可能性があります。数年単位らしいけど、1社で5億円ですからね。他のデータみると、まずは3〜5%(数百億円)くらいは動きそうです。

BtoC企業は、地元が盛り上がってくれば売上が長期的に企業へのリターンがあるため、今後も地方の企業版ふるさと納税は増え続けていくでしょう(もちろん直接的なリターンに関しては色々規定があります)。さてはて、多くのNPOは企業へのリターン(経済的なものだけではない)をどこまで創出できるのでしょうか。意外なライバル出現にジリ貧なNPOも多いと思うけどなぁ。

※寄付白書2015:日本ファンドレイジング協会

まとめ

まだ始まったばかりの企業版ふるさと納税。これからどんな事例が出てくるか楽しみです。

企業も創立地などに寄付するのはいいですが、ステークホルダーにきちんと説明していきましょう。CSR報告書の書き方に悩みますが、他社動向なども確認しながら試行錯誤するしかないっすね。というわけで、大手企業のCSR担当者の方は、するしないにかかわらずしっかりと資料を読み込んでおき、上司等の質問があった場合に答えられるレベルくらいになっておきしょう。

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執筆者:安藤 光展[→プロフィール詳細]

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