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CSRにおけるマテリアリティの特定・分析に必要なWhyとは

CSRマテリアリティ

マテリアリティとは何だね?

「マテリアリティ」とは、重要課題・重点課題などと言われます。CSRの戦略的側面として非常に重要視されている概念です。

企業が他の課題より重点的に取り組むべき課題を指すわけですが、マテリアリティの特定(策定/選定)の作業は、自社のCSR活動の優先順位づけを明確にすることであり、社会にとっても自社にとっても重要な事柄を絞り込む考え方です。

CSRがある程度進められている企業が突き当たる壁とも言える課題がこのマテリアリティ問題です。

そもそも事業活動とCSRって、オフセット・利益相反・ゼロサムであることが多いです。経済的成果と社会的成果の両立は理論上可能であることは間違いないと思っているのですが、現実的には、利益相反なことがほとんど。自分たちが大損や倒産してまで“社会に良いこと”をしたいという企業はいないはず。

ではマテリアリティって結局どのように決めるべきなのか。そして、決めたあと、どのようにブラッシュアップしていくべきなのでしょうか。

各種ガイドラインのマテリアリティ

・基本的に定性的なものである
・経営陣の視点ではなくステークホルダー視点で行わなければならない
・客観的になされなければならない
・合理的な測定方法を超越するまでの正確性は要求されない

と、国際的なガイドラインでは、それぞれ派閥はあるものの、マテリアリティの概要はほぼ同じなようです。で、僕は「マテリアリティ特定は経営陣の視点ではなく、重要ステークホルダーの視点から行わなければならない」という考え方だけには反対ですね。

ガイドライン的にはこういうしかないという気持ちはわかるけど、企業サイドからしたら、まだまだマテリアリティの概念が普及していない現代社会において、まずはどのような形でもマテリアリティの概念導入をすべきかと。その時に、経営陣の視点が最初は強くてもいいじゃないかと思うのです。毎年ブラッシュアップしながらクオリティを高めて、3年後に見直しすりゃええやん。

実際、CSR先進企業でもある、損保ジャパン日本興亜ホールディングスが「SOMPOホールディングスCSR重点課題の見直し」ということで、2012年に策定したマテリアリティの見直しを2016年4月にしています。SDGsやCOP21の影響が大きいとリリースが出てましたが、まったくそのとおりで2016〜2017年にマテリアリティの見直しをしない企業は逆に……おっとこれは以上は言えません。

Corporate Reporting Dialogue releases a Statement of Common Principles of Materiality(英語)
Corporate Reporting Dialogue(英語)

マテリアリティの目標とKPI

そもそも、御社はなぜマテリアリティ特定をしようとしているのでしょうか?

多くの企業は“他の企業もしているから”的な横並び精神から、実施を検討しているということかもしれませんが、本来は何か目的があってこそ意義があるものです。

目標の例でいえば、「経営資源の“選択と集中”による成果向上のため」、「CSR活動の方向性を明確にするため」、「グローバル・スタンダード対応のため」などなど。そもそも、こういったお題目がない状況で、マテリアリティ特定を行なっても、それは形骸化された枠組みでしかなく必然性が生まれません。

「なぜマテリアリティという概念が重要なのか」を理解しないまま、CSRコンサルタントやCSR報告書制作会社に言われたからやっているレベルの企業は、報告書やアウトカム(成果)を見ればだいたいわかるので、残念でしかありません。

これはGRI/G4の功罪の1つですが、CSR/サスティナビリティ報告(一部の統合報告)においての概念に限定されてしまった部分もあり、実務的なCSR活動のマテリアリティとのズレがある気がしてます。実際、企業担当者をヒアリングさせてもらうと、CSR推進企業ほどズレが多くなっているようにも見えます。

自社のマテリアリティを特定することは、CSR活動の戦略化を促し、効率的でより成果にコミットメントできるクオリティ向上を目指すものであったはず。SDGsもこの1月からスタートしたし、今一度、2016〜2017年で、マテリアリティの見直しを行なった方が良い企業が増えています。

マテリアリティのインパクト

アウトカム(成果)がインパクト(影響)に与えるインパクトは、例えば、CO2/GHG排出を1t削減するより、その分に使うコストで従業員の福利厚生を充実させたほうが、ステークホルダーの満足度が高くなる、とかです。

もちろん、環境活動は重要だというのは重々承知ですが、環境活動は“やって当たり前”でやらないと減点されるけど、もはや加点されることはほとんどないので、社会的インパクト・経済的インパクトが小さくなってるのでは?と。

最近はこのマテリアリティに対して、成果主義といいますか、“インパクトの大きさ”を求める企業担当者が増えているように思います。社会のニーズとは言われるけど、それに引っ張られすぎると、自社へのリターンが増やせないというか。

マテリアリティ・アセスメントというかマテリアリティの評価は、本来は、自社の戦略において分析・特定されるべきもの。特化すべきイシューの意味・意義を考えるのはもちろん重要なのですが、最終的に企業サイドのメリットが少なければ、KPIからはずす勇気も必要でしょう。

GRIなどが言っているマテリアリティの策定・選定は重要なものの、その目標は、僕は、もっと企業サイド寄り(経済的インパクトをより重視)でいいと思うんですけど。

国内課題と国外課題

あと、先日とある大手企業のCSR担当者の方が言っていて気になったのが“国内のマテリアリティ”です。社会課題ってどうしても全世界的な課題を中心に語られるのですが、日本固有の社会課題はたくさんあります。そして、日本企業で日本国内にステークホルダーがたくさんいるなら、国内のマテリアリティ(それをマテリアリティとするかどうか…)も重要だと。

本当はそうなんです。例えば「人口問題」って社会課題があるけど、日本では「少子化(人口減少)」が問題で、世界では「人口増加」が問題になってます。極端な話、社会課題の見方が国外と国内では逆になることもある、と。そんな時に「人口問題」をマテリアリティに設定すると、ステークホルダー視点でギャップが生まれない?ということも可能性としてありうるのではないでしょうか。

企業としてマテリアリティ策定をしCSR活動をしていくというトレンドは、CSR活動に戦略性をもたらしインパクト拡大に貢献するので良いと思う反面、戦略から“こぼれてしまった”国内課題は本当にマテリアリティではなくてのか、という疑問を解決してはくれません。

特に日本企業は日本人ステークホルダーに対するアプローチも必要ですし…。グローバル企業の視点は世界的であるべきですが、実務的に国内課題をどこまで重点課題に盛り込むことができるのか、という課題は、CSR先進企業の今後の大きな課題となるでしょう。

それこそ、今後は国外売上比率を高めるぜ!という企業は国外の課題をマテリアリティとすべきでしょう。逆に国内展開を強化したいのであれば、国内課題の優先順位を挙げると、中長期経営計画とマッチしたCSR戦略となりうるのかもしれません。マテリアリティというのは、中期経営計画そのものであり、選択と集中によるインパクト最大化を目指す考え方です。

ステークホルダーのニーズ“だけ”に振り回されぬよう、CSR担当者はリーダーシップを発揮し、自社の経営戦略とCSR戦略の整合性・合理性を最大化し、CSR活動が経営効果に直結させた展開をしていきましょう!

まとめ

CSR活動を数年行なっていたり、CSR報告書を複数年発行している企業が次にぶつかる壁は間違いなくマテリアリティです。

本記事では色々とマテリアリティに対して指摘をしてきましたが、もっとも重要なマテリアリティへのアプローチってなんだと感じましたか?

「そもそもマテリアリティって何で決めなきゃいけないんだっけ?」という、いわゆる Why の答えをまず見つけることです。あなたは、上司や経営層に「なぜマテリアリティという考え方がCSRに重要なのか」と聞かれて、ちゃんと論理的・合理的に答えられますか?

そのあたりの支援をするのが、僕らCSRコンサルタントだったりするのですが、企業ごとに答えが異なるため難易度は決して低くないし…。縦割りな日本企業では社内の壁がものすごく高かったり…。まぁ、がんばりしょうか。

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執筆者:安藤 光展[→プロフィール詳細]