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企業倫理問題事例からみる、CSRと倫理の関係

CSR企業倫理

企業倫理とCSR

大手企業の不祥事が起きると話題になる「企業の倫理性」。

ここ数年で、いわゆるCSR推進企業と呼ばれる企業の不祥事が何件もありました。詳細は各種ニュースメディアで最新情報をご確認いただければと思いますが、2015年前半でいえば、「東洋ゴム工業:データ不正問題」や「東芝:不適切会計問題」などでしょうか。

東洋ゴム工業も東芝もCSR先進企業であり、コンプライアンスやコーポレートガバナンスの仕組みも充実していたはず。なぜ、問題が起きてしまったのか。しかも、両社とも何年も前から内部で問題になっていたとかいないとか。

まだ顕在化していない案件も考えれば、残念ながら、日本の先進的なCSR推進企業は「ただのCSR情報開示が上手い企業」程度の認識になってしまうのかもしれません。「だからCSRを声高に叫ぶ企業は…」と言われてしまうのが、支援をさせていただく人間として非常に残念でなりません。

では、何が問題の根本になったのか。その一つのヒントとして「倫理観の欠如」があるのではないか、と僕は見ています。個人としても企業としても、です。

企業倫理はCSRの認識でもいいのですが、やや根深い課題でもある気がしています。日本には商道徳というまさに“三方よし”的な発想がありますが、経営層のマインドの問題でもあり現場の問題でもあるわけで、統制が難しい課題です。というわけで本記事では、企業が持つべき倫理観についてまとめてみます。

「誠実な企業」賞

「誠実な企業」賞2015 [最優秀賞]伊藤忠商事株式会社、[優秀賞]株式会社滋賀銀行、東レ株式会社

「『誠実な企業』賞 -Integrity Award-」は、企業経営の誠実さの重要性を示していくとともに、企業の社会的責任を重視した誠実な経営が中長期的に見て市場で高い競争力を持つことを評価しつつ、こうした意識の高い企業を社会的に応援する観点から、企業の社会的責任、企業倫理、コンプライアンス、内部統制等に優れた取り組みを行っている企業を選出し、表彰することを目的としています。

このアワードはCSR関係者の間では有名っぽい気がするのですが、イマイチ一般のメディアに載らないような気もします。規模が小さいからでしょうか?こういう、倫理観などを表彰する制度は、個人的に好きです。ちなみに、その前の受賞企業は以下の通りです。

2012年 [最優] オムロン、[優] 三井物産、ベネッセホールディングス
2013年 [最優] ブリヂストン、 [優] ヤマトホールディングス、伊藤忠商事
2014年 [最優] 野村総合研究所 [優] アンリツ、前田建設工業

参照:「誠実な企業」賞2015 -Integrity Award

ステークホルダー・アクティビスト

1人のCEOとして私は、シェアホルダーだけではなく、もっと広範囲なステークホルダー(利害関係者)に対し、説明責任を果たさなければならないと考えている。ここでいうステークホルダーには、顧客、従業員、パートナー、サプライヤー、一般市民、政府、そして環境まで、当社の事業が影響を与えるすべての対象を含んでいる。
ステークホルダーへの説明責任を果たすことを企業に求める「ステークホルダーアクティビスト」が必要であり、実際、今後続々と登場してくるだろう。
企業に迫る「ステークホルダーアクティビスト」が必要だ

セールスフォースのマーク・ベニオフCEOのオピニオン記事です。なぜこの記事を紹介するかというと、「ステークホルダー・アクティビスト」という存在を知ることが重要だよ、というのと、企業の倫理観って外側からも熟成されていく、という持論があるからです。

リスクが顕在化した時、人は本気になります。そのリスクとは何かというと、例えば、国際NGOが倫理観欠如の傾向がみられる企業を叩く、です。

NGOやNPOがメディアにリサーチ・レポートを掲載するとメディアからも叩かれるようにます。そのメディアを通じ、一般生活者が企業を叩くようになります。そこまで広がらないものもありますが、国内でも大手アパレルや大手外食企業が叩かれるのを見たことがある人も多いでしょう。

倫理観の社内熟成は、CSRの従業員教育(研修)などで広げていく必要がありますが、高すぎるノルマの設定などにより、倫理遵守の仕組みが機能しないこともあります。「ノルマ > 倫理」という構図です。「キレイごとだけじゃビジネスなんてできませんよ」的なヤツです。

こういった企業の現状を、NGO/NPOやメディア、発信力のある個人などが中心となる「ステークホルダーアクティビスト」となり、今後も企業に説明責任を求めたり、倫理観の向上、CSR全般への対応を求めていくことになるでしょう。それによって、企業が対応に迫られ本気でCSRや倫理観の熟成を行なうのかなと。

個人の倫理観と企業の倫理観

コーポレート・ガバナンス、そして企業倫理

こちらのレポートはちょっと長めですが、改めて企業倫理とは何かを考えるのに非常によいかと思い紹介させていただきました。一つだけ考察の例題として以下を紹介します。

A国において贈収賄は日常茶飯事であり、贈賄なくしてA国の公共事業への参画は難しい状況にある。A国においては国家元首も収賄を行っていることは公然の事実であり、贈収賄に関する法律は実質有名無実化している。さて、贈収賄は反倫理的との一般認識が確立しているB国の大手企業UVW社は、A国政府が検討している新しい発電所建設の受注を目指している。この案件のUVW社の責任者DはA国の関係公務員に贈賄を行うか否か悩んでいる(A国においても贈収賄は違法であるが、この法律はA国において実質的に存在しないがごとくになっていると仮定する)。

MBAのセッションとかで出てきそうな話です。企業として、海外で発電所建設を受注しようというのは、ごく普通のビジネスです。最近、日本もどこかの国で3,000億円くらいの受注をしていた気がします。

「実際バレなそうだから受注のために賄賂送っちゃおうかなぁ」という面がある一方、自国では犯罪行為でありビジネスパーソンとしての倫理観としても決断しにくい面もあります。いってしまえば、仕事だと割り切って賄賂を送るか、大きなロスになるが自分を律し、別の国や企業にアプローチしなおすかの2つの選択肢があります。

レポートでは、これは個人的倫理観の問題ではなく、企業倫理の問題であるとしています。個人の集合体である企業の倫理観は、個人的倫理観の総和ではなく、さらに高度な倫理観が社会から求められる、ということです。

冒頭で2社の事例を挙げましたが、この例に近い状況があったのかもしれません。個人の倫理観欠如による不祥事は、企業としての倫理観の徹底(特にコンプライアンス遵守)、具体的には不正業務や不正会計が行なわれない監査体制の不備(ガバナンス問題)が原因の一つなのでしょう。(東芝は現在調査中ですが)

マイケルサンデル氏ではないですが、「3人の友人の命を救うために、目の前の他人を1人殺せるか」とか「急流に落ちてしまった、母親と子どものどちらを救うか」みたいな哲学的要素も倫理にあるっちゃありますが、この「価値観」というか理念をどこまで追求できるかが、倫理の浸透には必要なのかもしれません。

まとめ

企業倫理は、CSRでいう、コンプライアンス遵守やコーポレートガバナンス構築につながる考え方でもあります。

そもそも、これらが実施される仕組みがないと、どんなにCSR先進企業と言われてもいつかボロがでます。

ただ倫理観としてステークホルダーがどうこうではなく、自社の規律向上(意識浸透)がメインな気がしていて、これがまたやっかいだったりします。CSR担当者がタッチしにくい領域もあるかと思いますが、「信頼される企業になる」ために、一つずつ対応していきましょう。

いま、まさにあなた自身の倫理観が、企業、そして社会から求められています。

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執筆者:安藤 光展[→プロフィール詳細]

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