CSRコンプライアンス

コンプライアンスの規定範囲

コンプライアンスとコーポレート・ガバナンスは、事業活動の根幹を成す重要な概念です。

しかしながら、いつの世も「その行動って倫理的にどうなのよ?」という話題がニュースに流れるのはどうしてなのでしょうか。

コンプライアンスとは、日本では「法令遵守」と訳されることが多いですが、CSR的には「法令等遵守」という認識が広がってきています。

“等”ってのは、法律に従うだけではなく、社会的要請(社会ニーズ)に応えることもコンプライアンスなんだよ、ということ。つまり、法律さえ守っていれば、環境破壊をしようが何をしようが関係ないじゃん!ではダメだよってこと。すべての企業がそんな意識だったら地球が明日にでも壊れちゃうじゃんね。

というわけで今回は、CSR文脈におけるコンプライアンス対応、コンプライアンス経営について、最新事例を交えながら振り返ってみます。

大塚家具のコンプライアンス問題

様々なメディアで取り上げられた「大塚家具のお家騒動」。ご存知の方も多いと思いますが、「上場企業トップの“親子喧嘩”」のお話でございます。

コーポレート・ガバナンスの大騒動の良事例として、後世までケーススタディされると思われるものでした。コンプライアンス的視点で、何が問題かというと、現社長の久美子社長がコンプライアンス強化をするため、と株主に提案していたこと、です。コンプライアンスが欠如しつつあるのは、社外の環境要因ではなく、実は元社長の横暴だったと。

この騒動もあってか、売上はガタ落ち(2015年3月の店舗売上高が前年同月比約38%減)のようですので、これからどう巻き返していくのか注目が集まっております。ってか、前年同月比4割減、って超絶ヤバい数字のように思えますが…。

プレゼント当選者数水増し

消費者庁によると、同社は「まんがライフ」「まんがくらぶ」「まんがライフオリジナル」「まんがくらぶオリジナル」「本当にあったゆかいな話」「本当にあったゆかいな話 芸能ズキュン!」「まんがライフMOMO」の7誌で、2012年から13年にかけ、読者プレゼントの当選者数を実際より水増しして掲載し、実際のものより著しく有利であると消費者に誤認させた。
竹書房がプレゼント当選者数水増し 消費者庁が措置命令 「まんがライフ」など7誌で

この手の話もよく報道で見る気がします。一昨年、秋田書店が起こした同様の問題を他人事としか思っていなかったのでしょうか。

コンプライアンスだけではなく、コーポレート・ガバナンスも現実的なラインで進めないと、現場トップの倫理観のみが最後の砦となってしまい…性悪説は日本人的ではないとはいえ、誰かが監視できる仕組みをきちんと作らないと、ですね。

プレゼント当選者というごく一部のインパクトの差ではあるものの、嘘はさすがにマズいです。御社ではこういうことないですよね?

スポンサーからの利益供与

次の話題は、テレビ局アナウンサーの行動がコンプライアンス違反なのでは?という話題。

■上重アナに悪気があるようには見えない

社会的なインパクトが大きいテレビの世界では、色々と裏側があるのでしょうけど、スポンサーと局側の癒着は好ましいとは言えません。CSRにおいても「腐敗防止」はガバナンスにおいて、重要な概念です。

大きなメディア企業は、広告ビジネスをしているので、お金をもらっちゃいけないとはなりませんが、スポンサー企業と従業員との不透明な関わりは、かなりグレーゾーンな気がします。

じゃあ、ランチや会食を“プライベートで”ごちそうになったらそれだけで収賄になるのか、というとなかなか判断は難しいものの、誤解される可能性があるのであれば、できるかぎり対応しない、というのがセオリーなのかな。

仮に、業務上のことではなく、プライベートな個人間のやり取りだったとしても、会社に所属している以上、従業員の社会的責任が企業の責任にもされます。線引きは難しいですが、研修とかを充実させ、リスクと認識してもらうなどの対応が必要なのかもしれませんね。

日本と世界のコンプライアンス対応

海外事業においても、自ら違法行為をしない、あるいは違法行為をする相手とは取引しない。これに議論の余地はない。問題は、この先である。CSRはBeyondCompliance(法規制を超える)と言われる。当地規制で義務化されている訳ではないが、企業倫理や社会的課題からみて、法規制を超えた企業行動が求められる場合、どこまで行えば十分と言えるのであろうか。
グローバル時代のコンプライアンス、どこまで行えば十分か?-CSRの文脈における2つの論点

ニッセイの川村さんのオピニオンです。詳しくは該当記事を読んでいただきたいのですが、取引企業との関係性を見直す、CSR調達的な考え方が重要だとしています。CSR調達とは、そもそもサプライチェーンにおけるコンプライアンス活動という側面がありますよね。

事業活動の中でも、基礎中の基礎となる部分ですので、確実に対応しておきたい領域です。

まとめ

毎日のように話題に事欠かない、企業のコンプライアンス違反事例。

厳密にはコンプライアンス違反ではなく、コーポレート・ガバナンスの機能不全だったりするのですが、CSR担当者も法務部門等に任せきりではなく、きちんとした対応をし、情報開示を適切に行なっていきましょう。そして、従業員ひとりひとりのコンプライアンス意識を高め、倫理観を強めていかないといけません。担当者だけがんばっても従業員の暴走は止まりませんからね。

毎度、この手の記事では言っていますが、不祥事は大なり小なりどの企業にも起きます。人間が事業活動に関わっている以上、これは避けられない事実です。問題は、コンプライアンス違反と思われる行為があった時にどう対処するのか、です。まさにそれがコンプライアンス経営なのかなと。性悪説な考え方も、CSRにおいては必要だと思うんですよ。キレイごとだけでは、組織統治なんてできません。

コンプライアンスはCSR領域の中でも“守って当然”の項目です。「人の振り見て我が振り直せ」です。決して他人事と思わず、全社的に対応していきましょう!

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