グローバルCSR

グローバルなCSR

ビジネスがグローバル化していくのと同時に、CSR活動も日本特有の形から国際的でグローバルなCSR活動にしていく必要があります。

では、グローバルなCSRを展開していくのに、どんなポイントに気をつければいいのか。国際的な事例やデータを、経済産業省の「グローバル企業が直面する企業の社会的責任の課題」(PDF)を参考に振り返りながら、まとめます。

企業の社会的責任の課題

CSR(企業の社会的責任)は、企業経営に重大なインパクトをもたらしうるリスクであると同時に、戦略的に取り組めば企業に多くのメリットをもたらすチャンスでもある。慈善事業として捉えるのではなく、取り組みを進めることがビジネスを成り立たせる上でも必要不可欠であるという認識で取り組むことが重要。
(「経済産業省|グローバル企業が直面する企業の社会的責任の課題」(PDF))

昨今のCSRはCSVの文脈にもあるとおり、リスクだけではなく、オポチュニティ(機会)としても捉えていこうぜ!という動きがあります。コンプライアンスやコーポレートガバナンスを遵守するのは当然のこと、リスクを解決するということは、それがビジネスチャンスでもある、と。

確かに、世界的にみてもCSRはリスクの部分が注目される場面の方が多いかもしれませんが、メリットがないわけではなく、企業活動としてどうやって戦略的に取り組み、CSR活動推進をしていくかという具体的なポイントを探るフェーズになったのかなと思います。

参照:CSRの必要性とは? CSRのメリット・デメリットまとめ7選

各国の対応

アメリカ

米国では連邦政府とともに州政府がCSRを推進しており、例えばカリフォルニア州政府などは連邦政府の基準を上回る独自の制度を発足させている。また、非営利民間団 体である「Sustainability Accounting Standards Board (以下SASBという)」が、業種ごとのサステナビリティ開示基準を作成している。

一般論では、アメリカは寄付大国であり、フィランソロピー的なCSRも多いとされています。ただ、CSVのマイケルポーター氏のお膝元であり、Bコーポレーションなどの動きもあり、州政府や民間からサスティナビリティ推進の動きが活発になっています。

参照:社会性を認証する「Bコーポレーション(ベネフィットコーポレーション)」

EU(欧州・欧州連合)

2011年以降、欧州委員会はCSRを「企業が社会において及ぼす影響に対する責任」と定義し、前回の「CSRは自発的取組(voluntary)」という定義を変更。社会的責任を満たすにあたって、企業は「社会的、環境、人権や消費者の懸念などを、ステークホルダーと共に、事業運営や戦略へ取り込むべき」という概念を示した。

欧州はCSRの先進企業やガイドラインが多い、アメリカと並ぶCSR先進地域です。ヨーロッパのCSRは、2000年代前半から「本業でのCSR」といいますか、事業活動のプロセスにおいてもっと社会的になろうよ、という動きがありました。

元々、失業問題(労働問題)ほか、様々な深刻な社会問題があり、企業も政府も皆で解決するしかない、という必要にせまられてということもあったでしょう。

参照:CSRとは何か? 企業のCSR活動の意味と定義を再考する5事例と9記事

イギリス

英国はCSRに関する国家的な行動計画である「コーポレート・レスポンシビリティ (Corporate Responsibility)に関する行動フレームワーク」を策定する過程で、2013年6 月27日、3ヶ月間のコンサルテーションを実施。

イギリスでは、CSRをCR(コーポレート・レスポンシビリティ)とすることも多いようです。イギリスでも世界での認識課題「CSR=慈善事業」があり、区別するためにCRというワードを使うようになった、という話もあります。政府のCSRの後押しがしっかりしている国でもあるようです。

参考:社会的責任(CSR/CSV)の意味・定義って結局なんなの?

ドイツ

ドイツにおけるCSRの主なフレームワークは、2010年の「国家CSR行動計画」である。この中では、(特に中小企業における)CSRの推進や、国際レベルでおよび開発途上のCSR強化など、以下の6つの優先分野が設定されている。

そうなんだ。これは知らなかったです。労働社会省を中心に国家的なCSR戦略を作ったとのこと。マルチステークホルダープロセスの中でまとめたんですね。日本も国家的な戦略として進めればいいのに。(反対が多そうだけど)

参考:CSR/ESG情報開示によって、ESG投資は日本でも普及するのか

オランダ

オランダにおける「国家CSR方針(2008‐2011)」は、経済省(Ministry of Economic Affairs) (国内のCSR方針に焦点)と貿易・開発協力省(Ministry of Trade and Development)(国際的なCSR方針に焦点)とが策定。 “Inspiring, innovating, integrating”というビジョンを 提示している。

ヨーロッパの中でもCSR推進国として有名なオランダ。政府が動くとやっぱり違いますね。進み方が。

参考:CSR調達が国際ルールとなる時代-CSR部の社内課題も浮き彫りに

中国

中国におけるCSR政策については、中国政府が計画や規制の形で基本的な要請を行い、 地方自治体と企業が実施する面が強い。特に国有企業はパイオニアとされ、その後を民間企業が従うことを期待している。

中国の環境問題は日本でもニュースが流れるくらい深刻。だから政府も本腰を入れ始めたそうなのですが、この浸透スピードでいけば、日本はすぐに追い抜かれそうです。

参照:「経済産業省|グローバル企業が直面する 企業の社会的責任の課題」(PDF)

まとめ

CSRに必要性(重要性)は存在するのか。これは間違いなくイエスでしょう。

CSR領域だけではなく、様々なビジネスにおいてグローバル化は避けられない社会変化であり、それぞれの国の社会背景をふまえながらビジネスをしていく必要があります。

ちなみに、世界的には「GRI」、「グローバルコンパクト」、「ISO26000」、「OECDガイドライン」の4つの主な国際的CSRフレームワークがあり、GRIとグローバルコンパクトが2トップで、ISO26000やOECDガイドラインはそこまで使われていないという経産省のデータもあります。

ISO26000は日本では大人気のフレームワークなのですが、世界的には全然人気ないみたいです。ただし、グローバルな日本企業でも多くがISO26000を参照しているのですが、それ自体は決して悪いことではありません。ISO26000は、そうはいっても十分グローバルな枠組みですからね。

というわけで、色々な情報を簡単にですがまとめてみました。御社のCSR活動の参考になれば幸いです。

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