紛争鉱物と人権問題

「紛争鉱物規制で変わるサプライチェーン・リスクマネジメント」(KPMG/あずさ監査法人、東洋経済)の読書メモです。

紛争鉱物とは、コンゴ民主共和国およびその隣接国で不正に産出される鉱物資源のこと。この紛争鉱物(コンフリクトミネラル、鉱物資源)が武装勢力の資金源となり、紛争や人権侵害を助長していることが世界的な問題となっています。そして、これが企業活動の何に多大なる影響を与えるかというと「人権」と「サプライチェーン」なのです。

この本のどこが良かったかというと、紛争鉱物についての考え方や情報開示方法についての記述があるのはもちろんのこと、人権やサプライチェーン・リスクなど、コンテクスト(背景・文脈)まで丁寧に解説してある点です。とあるメーカーのCSR推進プロジェクトの資料を作っていて、何気なく手に取ったら、思ったより良かった!系な本でございます。

サプライチェーン・マネジメントの要訣は「人権問題」だなと改めて実感しました。CSRの領域において、世界的な関心は「人権(労働慣行含む)」であり、サプライチェーンマネジメントとは、まさにビジネス・パートナーに関わる人権の話なのです。

また、紛争鉱物や人権に関わるガイドラインや規制である、SICC、SEC、ISO26000、GRI、ILO基本条約、OECD多国籍企業行動指針、国連ビジネスと人権に関する指導原則、国連グローバルコンパクト、SA8000、OECD紛争鉱物ガイダンス、などの解説もあり網羅性が高い内容となっています。

昨今、製造業の企業は猛烈な社会からのニーズとプレッシャーに晒されています。特にCSRにおいて人権・環境などを無視した製造プロセスをとることは、法にも触れてしまうような“巨大リスク”です。

「ドッドフランク法1502条」の法規制、世界各国のプレッシャーを考えると、本書を読んでいないメーカー担当者の方は早急に買って読んだほうがいいでしょう。本の帯にある「日本メーカーも知らないでは済まされない」という文言がマジだということくらいはご認識いただけると思います。

監査法人執筆の書籍なので、CSR全般の話をしつつも、最後には「統合報告やろうぜ!」となっておりますが、読む価値はあると思います。メーカー系のCSR担当者はもちろん、調達部門、IR、法務の担当者も読んだ方が良いと思った本でした。

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紛争鉱物規制で変わるサプライチェーン・リスクマネジメント

適用対象は米国上場企業やSEC基準適用企業だが、実質的には調達元企業も対応に終われることになるため、日本メーカーにも影響は甚大で、もはや知らないでは済まされない事態となっている。
本書では、メーカーや商社およびその系列や調達元などを多く抱えた先進企業における対応事例を交えながら、紛争鉱物や児童労働などの人権問題に対する企業の取り組み方を解説する。調達・CSR・企画・IR・法務担当者から経営者まで必読の書。