レジリエント・カンパニーになるために

今回の読書メモは「レジリエント・カンパニー」(ピーター・D・ピーダーセン、東洋経済新報社)です。

レジリエンスとは、本書では「しなやかさ」と訳されています。ちなみにしなやかとは、「柔軟で弾力に富んでいるさま。」、「動作・態度に角張ったところがなく、なよやかなさま。たおやかで優美なさま。」(三省堂)とされています。趣き深い言葉です。

日本でもよく使われるようになっており、官公庁などもこのワードを使っています。復興・防災関係が多いみたいですけど。

レジリエンスに関しては書評を含めて、『レジリエンスの経営とリーダーシップを学ぶ本「未来企業」(リンダ・グラットン)』、『企業CSRはレジリエンスで強くなれるのか?』という記事にもまとめてきましたが、今後のCSR経営において、重要な概念となるのだろうな、と感じています。

レジリエンスは、何か大きな衝撃があり、それから回復していく様子を形容したようなイメージで、CSRでいえば、リスクマネジメントみたいな部分なのかもしれません。

経営における負の外部要因なんて無限にあるし、ほとんどが突発的なもの(少なくとも企業にはそう見えるもの)です。毎日の意思決定の中で、次なる発展のきっかけを見出し、社会全体の健全な営みに資する行動を取れるのか、という点が問われています。

あと、いやらしい言い方をしてしまえば、「レジリエンス」が普遍的な価値観となるのかはわからないということ。エクセレント・カンパニー、ビジョナリー・カンパニーに事例として挙げられた企業たちの中でも、衰退していった企業がいくつもあるわけで。そう考えると、もう少し、具体的な対策があるとよかったかな。

ちなみに、本書ではレジリエンスにおける社会性とはCSRではない、と言っていますが僕はそうは思いません。この違和感は、筆者の考えるCSRとは、フィランソロピー的であり、小手先の社会貢献活動であると定義しているからだとは思いますが、そのあたりはもう少し丁寧な解説が欲しかった点です。

他に気になったのは、個人としての「レジリエンス」がポジティブ心理学にも通じるという点。精神性を大切にする日本人にこそ、このレジリエンスという概念が必要だし、またハマりやすいのかなと思いました。

読了後、まだ、なんかモヤモヤした感じが残りますが、決して悪いものではありません。僕の言葉で、レジリエント・カンパニーの3つの軸となる「アンカリング」、「自己変革力」、「社会性」という枠組みを解釈できないからかも。

この本の一番のポイントは「レジリエンスの自己診断チェックリスト」がある所。ぜひ、CSR担当者は自社の簡易チェックをしてみて下さい。本書は、CSR担当者をはじめ、経営企画や経営・マネジメント層の方に読んでいただきたいです。

ちなみに、『CSRセミナー「しなやかな強さを持つレジリエント・カンパニー」(1月22日14時、日本橋)』のために購入したのでありました。まだ席は空いているみたいですよ〜。

レジリエント・カンパニー

エクセレント、ビジョナリーを超え、レジリエンスの高い企業が時代を超えて勝ち残る。豊富な事例を基に強さの源泉と行動原則を探る。