CSV経営による事業活動への影響

今回は、「ハーバード・ビジネス・レビュー 2015年1月号」の読書メモを。昨日発売だったので即買い、即読書メモです。

何と言っても今月号の特集「CSV経営」です。特集の内容は大きく下の5コンテンツです。

・『【インタビュー】 世界一の企業を目指すならCSVは当然である』柳井正 ファーストリテイリング 代表取締役会長兼社長
・『CSVは企業の競争優位につながるか』岡田正大 慶應義塾大学大学院 教授
・『【インタビュー】 GEは事業で社会的課題を解決する』熊谷昭彦 日本GE 代表取締役社長兼CEO
・『ナイキのCSR活動:取締役会が果たす5つの役割』リン S. ペイン ハーバード・ビジネス・スクール 教授
・『【インタビュー】 ソーシャル・ビジネスというもう一つの選択肢』ムハマド・ユヌス ノーベル平和賞受賞者/グラミン銀行 総裁

ちなみに、慶応の岡田先生は「マイケル・ポーターが2011年に発表した論文にはいくつかの矛盾が存在する」としております。

僕が指摘してきたことを他にも指摘する人がいた!的な感銘を受けました。内容はかなりハードボイルドなCSV論ですので、読み解くには時間がかかるかもしれません。

個人的に最も興味深かった、柳井氏のインタビューの読書メモをしておきます。

経営者視点のCSV/CSR

ただ私はCSR活動とCSVの違いにはそれほど関心がありません。よい企業でなければ受け入れられないという事実は、世界中どこでも変わらない。
(本書より)

これはインタビュアーの「CSR活動は免罪符という側面もあるのでは」という発言に返した会話の一節。実はファーストリテイリングのCSRって、ここなのかなと感じました。

僕は、CSRは「信頼される企業になるため」にするものだと考えています。まさに、柳井氏が言っているような趣旨です。信頼される企業にならなければ、そもそもビジネスなんてできないはずなのですから。

孔子・アリストテレス・「真/善/美」というワードが出てくるあたりも、さすがでした。

だから、理論で説き伏せたりしがちな、コンサル系や広告系の人のCSV論って嫌いなことが多いのかもしれません。CSV理論が先行してしまい、結局、成果がでない、社内浸透に広がらない、という企業が増えすぎな現状は、現場的なコンサルティングをする僕から見れば、滑稽極まれリって感じ。

CSV論が悪いというより、「CSRではなく、CSVをしよう」という言葉遊びしかしない人が嫌いなのかもしれません。

あと、柳井氏はPDCAの重要性にもふれています。CSRでもCSVでもどっちでもいいけど、まず行動すること。で、微調整していけばいい。僕もこう思っています。予算が…時間が…、と言い訳ばかりする担当者の会社で、CSRが進んでいる所を見たことがありませんから。できることからでも始めようとしないと、いつまでたってもCSRやCSVなんて進みませんから。

あとは、インタビュアーがCSRとCSVについて質問を何回も投げかけているのですが、柳井さんの答えは、常に経営を軸に考えており、CSVの理論的なことはほとんど言及していた点も興味深かったです。CSRの現場(CSR担当者)との連携ができている、ということなのかもしれません。

日本の多くの企業担当者や経営者は、CSVやCSRをやたらロジカルに理解したり発信したりしたがります。それ自体は決して悪いことではないのですが、ちょっと視界が狭いと思わざるを得ません。

CSRは経営そのものであり、CSRやCSVをどう解釈するか、というのは、究極的に現場には関係ないこと。世界でビジネスができるように、信頼される企業になる。難しい理論ではなく、こういた現場的な言葉を使う柳井氏は、本質を分かっているな、と。

経営者のトップ・コミットメントって、改めて重要だなと思いました。もちろん、CSR担当者のいる現場は、現場の苦労があるのも承知しています。

他にも、興味深い発言はいくつかあったのですが、詳細は本を買ってご確認いただければと思います。あと、ポーター教授のCSVの特集の号、別冊(電子書籍)も合わせて読むとよいでしょう。

なんか、ファーストリテイリングが好きになりました。今日は、ユニクロに寄ってから家に帰りたいと思います。

ハーバード・ビジネス・レビュー

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