CSV時代のイノベーション戦略
今回は、「CSV時代のイノベーション戦略」(藤井剛、ファーストプレス)の読書メモを。
結論からいうと、CSR担当者より、マーケティングとか、経営企画とかの人にオススメかなと思います。CSRやCSVの解説書というより、マーケティング本というイメージが強かったです。
CSV関連の書籍は勉強のためによく読む(そもそも年数冊しか出ないけど)のですが、読書メモがいつも辛口になってしまうのが難点…。というわけで今回も辛口批評となります。すいません。
本書を読んで思ったのは、CSVとイノベーションを無理してつなげなくてもいいかなと。CSVでイノベーションという発想自体がステレオタイプというか、そんな簡単に起きるイノベーションは普通、イノベーションとは言わないというか…ね。
そもそも、提唱したハーバードのマイケルポーター氏がマーケティングの人だし、アメリカの人だし、どうしてもCSRをフィランソロピーとかチャリティの延長であるとする気持ちはわかります。
しかし、日本ではCSRとひと言で言ってもかなり戦略な部分も含むし、この10年で随分と普及したCSRというワードが、もう10年でCSVに置き換わることはないです。このままいけばですが、100%ないでしょう。
CSR関係者の方はご存知かと思いますが、「CSRとCSVに関する原則」という声明をCSR関係者がだして、昨今使われているCSVというワードが乱暴に扱われすぎているのでは?という疑問が投げかけられています。
CSVはCSRとは別のコンセプトであり、上位概念とか目新しさが注目されておりますがそれは勘違いだクソヤロー、ということみたい。(ちょっと言い過ぎ)
この本を読んで改め思ったのですが、CSRとCSVを無理矢理比較するのが、難しいかなと。CSRという超広い概念の中にCSVというコンセプトがあるのですが、それって欧米では「サスティナビリティ戦略」という枠組みがほとんどだし、CSVって言っている企業より、明らかにサスティナビリティというワードを使っている企業の方が多いと思うんだけどなぁ。
CSVはCSRと比較しないで、新しい経営コンセプトとして捉えて、マーケティング・イノベーションを語る方が現実的な気がします。何が何でもCSRと比較し上位概念であるというエセ学者みたいな人が多いのが残念です。まぁ、どうでもいいんだけど。
とウダウダ言っていてもしょうがないのですが、CSRの現場にマッチする内容ではなく、CSR担当者よりマーケティング担当の方のほうが読んで面白いかと思います。確か、筆者は「ハラル」に詳しい方だったと思うので、ハラル食分かとCSVの話とかがもっとあるとよかったな。
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CSV時代のイノベーション
新興国企業の台頭、猛スピードで進むコモディティ化――。従来型の経営モデルが通用しなくなり、日本企業全体が「イノベーションのジレンマ」に陥ったかのような中、CSV先進企業が“したたか”に進める新しい戦い方「CSV×イノベーション」に、日本再生の活路を見い出せ!
もはやCSRの延長で捉えてはならないCSV。真の「CSV経営」とは?持続的成長に向けた“新たな戦い方”を見出しきれていない日本企業のトップマネジメントや経営戦略・企画担当者、“骨太”な新事業を産み出すことができずにいる新事業開発担当者 必読の書。