中小企業のCSRとは

今回ご紹介するのは、「これからのCSRと中小企業ー社会的課題への挑戦ー」(商工総合研究所、2013)です。

最近の僕のテーマは「中小企業のCSRはどうあるべきか」ということ。中小企業はその経営特性から、大手企業のCSRとはやり方も大きく異なる。では、その“差”とは何か。

これは、中小企業のCSRコンサルティングでも言えるのですが、テクニカルな部分だけを議論してもしょうがないですよね。大企業みたいに億単位の予算なんかかけられませんから。

だからこそ、ミッション・ビジョンとCSRにおける自己評価ができる仕組みを、中小企業のCSRコンサルティングでは提供すべきですよね。

何はともあれ、非常に意欲的な作品でした。かいつまんで、書評メモを。

中小企業のCSR特性

多くの中小企業では、所有と経営が一致しています。

つまり、所有(株主)と経営(取締役、執行役)の分離・分担を原則としながらも、実際は主要株主は取締役の創業者関係者が行うというもの。社員が一桁という企業が世の中多いので、当然と言えば当然。

こういう企業活動の中でCSRはどのような役割を果たすべきか、という調査やレポートがメインとなっています。個人的に、最近は中小企業のCSR担当や代表の方などとお話をさせていただくことが増えていたので、改めて考えをまとめようと思い、本書を購入しました。

この本の説明はしにくいなぁ。事例も多いのはいいんけど、一つの意見として集約しにくい。とりあえず、以下の目次を読んでもらって、興味がある項目があれば買ってもらえばいい、という所でしょうか。

目次

■■■第1部 経営理念に立脚する中小企業のCSR
1、中小企業に「企業の社会的責任(CSR)」が問われる背景
国内外の情勢
企業の社会的責任(CSR)とは何か
社会的責任の国際規格ISO26000
 
2、中小企業のCSRの特徴
中小企業のCSRを巡る国内外の情勢、歴史
中小企業のガバナンス構造
アンケート調査にみる中小企業の経営理念とCSR
アンケート調査にみるソーシャルビジネス的特性

3、中小企業の経営理念とCSRの実際
経営理念とCSRについての中小企業へのヒアリング
ヒアリングから得られる意味合い

■■■第2部 社会的課題に挑戦する中小企業とCSRの支援・促進
1、中小企業の環境対応
中小企業に求められる環境対応とその現状
環境問題に取り組む中小企業
 
2、製品の安全・安心と中小企業
安全に関わる重大事故の発生と強まる「安心・安全」志向
安全確保とリスク管理
企業の社会的責任(CSR)としての製品安全
安全安心による価値創造と企業競争力
中小企業における製品安全への取り組み

3、地域振興に貢献する中小企業
地域貢献活動に対するニーズに増加とその背景
まちづくり活動の潮流
事例から見た中小企業の地域貢献活動の現状と課題

4、地域金融機関とCSR
本業とCSR
地域金融機関のリレーションシップバンキング
金融機関のCSRアンケート調査
ホームページでのCSR
地域金融機関にとってのCSR

5、中小企業のCSRについての支援・促進策と展望
中小企業のCSRの支援・促進策
まとめと今後の展望

まとめ

いかがでしたでしょうか。

中小企業の「所有と経営の一致」という特徴から、どのような中小企業におけるCSRマネジメントをすべきか。

また、中小企業のCSR活動におけるメリット・デメリットの把握と、CSRの必要性・重要性の明文化が超重要ですね。

どこぞの先生みたく、急にCSV(共有価値創造)の話とかに論理ジャンプしてない良書です。手前味噌で語るいかがわしい「CSV論」は飽きたので、こういった調査から始まる“CSRの本質”みたいな本は良いですね。

CSVが悪者みたいですけど、素晴らしい理論ですよ。でもCSRの変わりでもないし、経営論も分かってないような語りが大嫌いなだけです。

中小企業だからできる、顔の見える経営とCSR。どうやら、物理的にも精神的にも”ローカルなCSR”が中小企業のポイントかもしれません。

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