Yahoo!のCSR

つい先日、Yahoo!JAPANさん(以下、Yahoo!)のCSRサイト「CHALLENGE」がリニューアルされまして、それに合わせて、今回のCSRコンテンツの担当者の方をインタビューしてきました。

結論からいいますと、日本のCSRコミュニケーションのあるべき姿を体現しており、大小問わず、様々な企業のCSR担当者の方に読んでもらいたい内容となっております。

インタビュー記事なので、若干長めの文章量となっております。読了時間3〜5分。お時間無い人は、ブックマークしておいて下さい。

CSRコンテンツのジレンマ

今回、取材をさせてもらったのは、Yahoo!のコーポレートコミュニケーション室・船木かほりさん。

僕の場合は取材と言っても雑談に近いスタイルだったりするのですが、色々気になることを聞いてきちゃいました。

僕が聞きたかったことは1つだけでした。「なぜこのスタイルになったのか」ということです。

僕が様々な企業のCSR報告書制作担当者、CSR部の方とお話させていただいて気になるのは、「チャレンジがしたくてもできなくて、結局去年と同じ“普通”のものになる」というCSRコンテンツ制作のジレンマに陥っていることが多いからです。予算とか、部署間の利害関係とか、“社内政治的な”問題が色々あるんですよね。

Yahoo!はどうやって、よくあるCSRのジレンマを克服したのか。

CSR報告書、CSRコンテンツ、CSRプログラム「Links for Good」。この3つの枠とまさに、コンテンツの表題でもある「チャレンジ」について、お伝えしていきます。

CSRコンテンツ制作の3つのポイント

1、更新

船木さんがおっしゃっていた中でスゲーって思ったのが、コンテンツの更新について、です。

いやいや、ウェブコンテンツは更新するもんだよ、と思う人も多いとは思うのですが、CSR報告書(多分、会社案内も)などは、一年に一回程度の更新が多いです。加えて、日本のCSR報告書はアーカイブしか載せません。

アーカイブというのは、「今年はコレしました」とか「今までこんな活動してました」という、過去情報のまとめのことです。しかしYahoo!は違いました。一ヶ月に一回、コンテンツを更新していくのです。

これって、未来志向というか、日本のCSRコンテンツでは見たことがありません。CSR部運営のブログは、日本にいくつかあるのですが、それも活動報告が主な内容ですし。

船木さんが「トップメッセージはいつも一方的すぎる」とも言っており、上場企業の代表がNPOの方と対談するという、がっつりCSRのコンテンツになるのなんか前代未聞ですよ。トップ対談を12回するっても、ありえないよね。フツー。

しかも、対談で自社(Yahoo!)の話し出てきてないし(笑)(ちなみに、内緒ですが、12回更新するのはかなり大変って言ってました。でもやると言ったからにはやるしかないと、骨太な発言もしてました。素晴らしい!)

2、制作

今回、コンテンツを制作する上で大変だったこともお聞きしたのですが、制作過程をガラっと変えたことだったようです。Swichという、雑誌の出版・編集をしている企業とタッグを組んでいます。

なぜ、ウェブコンテンツなのに、雑誌系の会社と…?と思ったのですが、コンテンツの切り口や、写真のクリエイティブに定評のある会社なので、まぁ、そのへんもテーマの「チャレンジ」だったようです。全く関係ないですが、僕は大学時代、毎回雑誌買ってました。音楽ネタも多いので。

と、僕は話しはいいとして、「読み物としてのCSRコンテンツ」という話しがありました。

船木さんは、NPOとの対談を通じて、その団体を紹介したいし、読み物としても価値のあるCSRコンテンツにしたいと言っていました。このあたりは、CSRのコンテンツ・マーケティング的発想というか、CSR活動も重要だけど、CSRコンテンツ単体としても価値があるというのはすごいです。

どの企業のCSR担当者も「CSRコンテンツはアクセスがない」と言っていますが、それは言い訳だってことが、証明されてしまいましたね。コンテンツを消費することに価値がある(読み応えがある)ものを準備する。あなたの会社でも、Yahoo!を参考にして、ぜひ実践してみて下さい。

3、CSRプログラム「Links for Good」

先日、Links for Goodの話しは記事化しました。結構アクセスありました。
YahooがCSRでまた仕掛けた!クリックで世界を変えにいく「Links for Good」

で、その仕組みを改めて紹介すると、

Yahoo! JAPAN全体におけるページビューのまずは1%を次の世代の為に使います。月間約500億PV(※2013年1月~3月平均 Yahoo! JAPAN調べ)のうちの1%を使い、膨大な情報をユーザーに配信することで社会が抱える課題を解決するきっかけを与えられるようになります。
(トップインタビューより)

で、Links for GoodはCSRコンテンツと連動をしているのです。パートナーのNPOから社長対談の相手が選ばれるようですし。こういう新しい取組みはもっと評価されてもいいと思うんだけどなぁ。まだみんな知らないだけなのかな?

Yahoo! JAPANとは、突き詰めれば、あらゆる社会的な課題を情報技術によって解決するためのエンジンです。「何かを知りたい人」と「答えを知っている人」をつなぎ、同時に「世の中を変えたいと思っている人」と「世の中を変えるために行動している人」をつなぐ。そんなプラットフォームとしての機能をもっと活かすことで、今後より一層課題解決に挑戦したいと感じています。
(トップインタビューより)

こういう企業が日本にいることを誇りに思います。

取材雑感

色んな話しを聞けて、僕も勉強になりました。なんか、こう、CSRコミュニケーションの先進事例を見せつけられた感じでした。

ただ、1つだけ残念だったのは、「更新します」と書いてあるのに、更新を受け取る方法が書いてなかったこと。僕としてはRSSがいいんだけど…。

ちなみに、RSSはすぐは難しいそうですが、公式FacebookページTwitter(Yahoo!JAPAN広報)で、更新情報が受け取れるようですので、フォローしてみて下さい。

ツール・ド・東北」というプロジェクトにも注目してます。知り合いが何人か参加する予定です。僕は、これもCSRコンテンツだと思ってます。

まとめ

CSRコンテンツの価値って、作るのめっちゃ大変だと思うんです。でもYahoo!みたいに、キラーコンテンツ(CSRプロジェクト)をもっていれば、そこまで難しい話しではないのかもしれませんね。

僕は講演やセミナーで、CSRコンテンツについて、「読者が読みたいと思うものを作れ」と言っています。つまり「企業が言いたいことと、読者が知りたいことは必ずしも一致しない」ということです。「北風より、太陽」理論です。

日本のCSRコンテンツに足りないところってそこなんですよね。ステークホルダーに「何回も読みたい」って思わせるシクミ・シカケがないんです。それで、アクセス少ないって嘆くCSR担当者とか、もーどんだけジコマンなんだよって思います。

Yahoo!の事例を参考に、CSRコンテンツ制作に関わる皆さんは、コミュニケーション・デザイン云々の前に、コンテンツそのものの魅力を磨いて下さいね!