手に取るように環境問題がわかる本

「手に取るように環境問題がわかる本」(かんき出版)を読んだので書評を。

大枠を捉えるのに、とても良い本だと思います。しかし、専門家からすると、確認程度のものであるかもしれません。エビデンス(科学的根拠)に乏しい部分はありますが、そこまでアカデミックな情報を求めないのであれば、買って読む価値はあるでしょう。

書評として、一番気になった部分、「環境問題が解決しない5つの理由」について少し考えてみます。CSRとしてもわかりやすいものだったと思います。

環境問題が解決しない5つの理由

1、人間の欲求に密接に関わっているから

環境負荷を減らそうとすれば、快適さや便利さを犠牲にしなければなりません。しかし、人間の欲求を変えるのは容易ではありません。
(本文より)

確かに。環境問題の最大の的は、二酸化炭素ではなく、人間そのものなんでしょうね。

また、筆者はインセンティブがないことも指摘しています。

これもわかる。エコだなんだって言っても、数十円の電気代を浮かせる(使用しない)くらいでは、「それぐらいなら別に払うから面倒なのはイヤ」って人も多いでしょうね。

企業も一緒ですよ。気持ちはね。本当は、結構なコスト削減につながることも多いんだけど…。

2、長期的で広範囲にわたるから

「地球温暖化」や「生物多様性」などの問題は、いきなり大きな被害が生じるのではなく、事態が深刻化するまで時間がかかります。
(本文より)

まーねー。ぶっちゃけ、想像でしかないので、実感が薄いのはありますよね。

しかも課題の対象範囲が広いので、環境汚染の主体と、被害を受ける主体は別であることもある。

そうなると、汚染をする側(変な言い方ですが)は、実感がないので、どんどんしちゃうわけです。

3、利害関係が複雑だから

とくに、環境対策を進めたい先進国と経済成長を優先したい途上国の間で意見が対立し、合意形成が難しいという面があります。
(本文より)

環境系のソーシャルビジネスなどの発展により、必ずしもそうではない場合もあると思いますが、「環境問題は政治問題」と言われるくらい、利害関係の巣窟でもあります。

このあたりは、「オフセット」の話しもあり、先進国の環境負荷を途上国にかぶせるなどもあります。いやー、難しい。どうしたら、根本的な解決の糸口が見えるのでしょうか。

4、効果測定がしにくいから

「温暖化問題」は、その影響が数十年、数百年単位で地球規模で現れるという極めてスケールの大きい問題です……仮に私たち一人ひとりが自分のライフスタイル変えて省エネ努力をしたとしても、あまりにスケールが大きい問題であるだけに、自分がどれだけ貢献できたのか実感しにくく、取組みが広がっていかないという一面があります。
(本文より)

対策の効果が見えにくいです。

山林の木が増えたとか、伐採して適正になった、二酸化炭素排出量が減った、などの測定はできます。でも肝心なのは、「その行動で、環境の何が変わったか」ということ。そこまで考え実行しなければならないのが難しい所なのでしょう。

5、他の課題より優先順位が低いから

環境問題の解決にはコストがかかりますが、こうした他の社会問題(貧困、教育、医療など)に比べて優先順位が低く設定されがちです。
(本文より)

筆者はそう言ってますが、日本のCSRは90年代の環境活動から始まっているし、決して「優先順位」が低いとは思えない。むしろ、CSRは環境活動に傾きすぎてると思うくらい。

この部分だけは、僕にはよくわかりません。エビデンス(科学的根拠)にも乏しいし。

でも、わからんでもないっす。

解決しなければならない社会的課題が近年、視覚化(認知度向上)されてきて、以前より課題が多くなった分、リソースが分散してきた、というのはあるでしょうね。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

僕としては、ちょっと乱暴すぎる記述が多いように見えました。

でも、これからCSRとして環境活動をしていこうとか、「環境活動って実際どうなの?」みたいなフェーズの人たちには、読みやすくわかりやすい本かと思います。環境活動をトータルで学びたい方は、ぜひ読んでみて下さい。