CSRのメガトレンド

今回は、先日寄稿し紹介もさせていただいた「CSR企業白書2018」のまとめと、有識者たちの視点を一部ですが紹介させていただきます。

昨年に続き、今年も2本を寄稿させていただきました。特に「CSRコンテンツ、エンゲージメントと企業評価の最新動向」に関しては、それなりの論考になっている自信があります。2年間の私の調査・研究の集大成的なレポートとなっています。アカデミアの人間ではないので、こういった論考が出せるメディアに執筆の機会をいただけたのは感謝しかありません。この場を借りて関係各位の皆様にお礼申し上げます。

さて、今回は、4月に発売となった「CSR企業白書2018」の、有識者による最新レポートをまとめます。詳細は書籍を確認いただきたいですが、値段的(2万円近くします)に買えない方もいると思いますので、一部ですが引用および所感をまとめます。興味がある領域の話があれば、再度、会社に書籍購入の申請をしてみてください!

専門家のレポート

1、<総解説>2018-19 CSR/ESG重要テーマ30(安藤光展)
2、いま日本企業はどのような視点を持ち、どのように行動したらよいのか?(下田屋毅)
3、残念な英語版CSRレポートから脱出するには(赤羽真紀子、中島真里)
4、これからの経営に求められる人権尊重とは(海野みづえ)
5、統合報告と税務報告の情報開示が日本企業に変革を迫る(山本昌弘)
6、LGBT施策の成果と課題(村木真紀)
7、CSR経営からサステナビリティ経営へのシフトが加速(ピーターDピーダーセン)
8、ESG投資で注目が集まる環境情報(荒井勝)
9、CSRトップティア企業の投資家向け情報開示が進む(北川哲雄)
10、CSRコンテンツ、エンゲージメントと企業評価の最新動向(安藤光展)
※「()」内は執筆者名

執筆者はいわゆる業界の有名どころでして、CSR界隈の仕事をしている方は「名前を聞いたことがある」という人が多いでしょう。今回は、私の2本の寄稿を含めて、情報開示全般が大きなテーマになっているようです。

CSR/ESG全般のトレンドから、具体的な活動や情報開示の方法、メガトレンドからの実践に落とし込むための思考プロセスなど、非常に幅広いため、かなり読み応えのあるレポートになっています。

個人的には、それぞれの専門家に上記の内容の話を聞こうとすると、講演で1回・数十万円はかかるので、そのエッセンスがまとめて2万円でおさまるなら“買い”だと思います。(当然メインは各種ランキングやデータとなりますが、専門家レポートだけでも価値はあります)

専門家レポートの概要

※「()」の番号は前述のレポートナンバーです。

(1)は、私の寄稿です。2018年度のCSR/ESGの重要テーマを30テーマほどピックアップし解説しました。国内外含めて実務的な影響が2018〜2019年にあるだろう項目をまとめているので今後の活動のヒントになると思います。

(2)は、イギリス在住のCSRコンサルタントの筆者が注視するグローバル・メガトレンドの話です。日本ではあまり語られない様々な概念の紹介がされています。

(3)は、CSRレポーティングにおける英文の考え方をまとめています。結論としては「日本語作成時から簡潔明瞭な文章にする」ということなのですが、具体例は非常に興味深いものがありました。特にグローバル大手企業の担当者の方は、知らないとマズイと思われます。

(4)は、「人権問題はサプライチェーンの末端で発生しやすい」という問題提起をしています。国内外を問わずサプライチェーンマネジメントにおける課題認識の重要性が理解できます。

(5)は、CSRと税務報告についてのレポートです。タックス・プランニングのやり方によってはESG投資の対象除外の可能性も指摘。このあたりに追いつけていない人は必読です。

(6)は、LGBT施策の最新動向についてのレポートです。企業が行うべき具体的な対策も関われおり、企業関係者にはかなりためになるでしょう。

(7)は、ピーダーセンさんのいつものサステナブル経営のついての論考です。内容は、経営・戦略コンサルティング会社が考える視点に近いかもしれません。外部からのプレッシャーに関する視点が特によくまとめられています。

(8)は、タイトルどおり、環境と投資の関係性についてまとめられています。投資家がなぜ企業の環境側面に注目するのか、開示の具体的な方法論、などがまとめられています。

(9)は、投資家向けにどうようなCSR情報を開示すればいいのか、事例を交えて紹介しています。事例として、オムロン、味の素、コニカミノルタなどが紹介されています。味の素、オムロン、さすがです。

(10)は、私の寄稿です。CSRウェブコンテンツの評価は国内で誰もしていなかったので、我々で調査・研究しました。最新動向からエンゲージメント向上に関する論考とまとめています。CSRウェブコンテンツの運用担当者は必見です。

所感

全レポートを読んで感じたのが「SDGs」の浸透が社会を大きく変化させている様子です。ほぼすべてのレポートで言及されていました。2015年9月当時はここまで盛り上がるとは正直思っていませんでしたが、日本がマジでSDGsで変わり始めています。

SDGsは、政府・企業・自治体・NPO/NGOそして世界のすべての組織との唯一にして絶対の共通言語です。よくも悪くもこの不可逆な社会の流れにどこまで乗れるのか。最重要な事業活動の足元(現場)を見つつも、有史以降最大のメガトレンドは社会の構造変化をすでに促しています。

ちなみに、専門家のレポートも非常に勉強になりますが、後半のメインとなるデータやランキングももちろん面白いですよ。

このCSR企業白書に関連したセミナーを7月30日に実施予定です。ご興味がある方は日程調整をお願いします。(確定情報は後日告知いたします)

CSR企業白書2018

CSR・ESGを多くの情報から知るために欠かせないデータ集。『CSR企業総覧(雇用・人材活用編)』2018年版、『CSR企業総覧(ESG編)』2018年版掲載の1413社のあらゆる情報をランキングと業種別集計表で詳細に紹介。業種別集計表で全体像を把握し、個別ランキングを見ていけば優れた会社がよくわかる。各企業のCSR担当者が自社の強みや弱みを見つけるためにも活用できる。CSR・ESGの専門家だけでなく、就職活動やゼミなど幅広く利用可能!