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日本のCSR報告書が“ハイコンテクストの壁”を超えられない理由

CSR報告書

CSR報告書の文化的背景

先日『コミュニケーションの要諦は「察してくれ」に甘えないことなんだけど。』という記事を読んで感じたことをまとめます。

記事では、『「だろうコミュニケーション」から「かも知れないコミュニケーション」に。自分に都合よく思い込まず、相手にきちんと言う、聞く。面倒くさいが、それは「多様性を求めること」の1つの代償でもある。』という話です。

これは、まさに日本のCSR報告書の課題ではないか、と思ったのです。

多くの企業が「CSR報告書はCSRコミュニケーション・ツールである」と定義しているにも関わらず、コミュニケーションがステークホルダーの多くと成立していない現状は、非常によろしくない。これは「察してくれ」というハイコンテクスト文化から脱していないことが問題なのではないか、と。

CSR報告の現場

・投資家も他のステークホルダーも、結局CSR/ESG情報“だけ”で何かを判断することはなくなった。むしろ、CSR情報の開示の重要性は変わらないものの、いわゆる“CSR情報だけ”を発するCSR報告書から脱却しないと、読者に価値提供できなくなった。
・「自分たちが強みだと思っていること」と「顧客・投資家が魅力と感じていること」は違う。「価値ギャップ」と私は読んでいますが、「情報の送り手側が提供できる価値」と「情報の受け手側が求めている価値」の間にズレがないから。「会社が伝えたい価値」と「受け手が求める価値」が一致している場合は、お客様満足度が上がる。
・CSR報告書こそ「ステークホルダー・ファースト」の冊子にしなければならない。

最近、上記のようなことをCSR報告書制作の現場で感じています。

極論、他社事例を気にするとかどうでもいいので(競合分析は重要です)、ステークホルダーを徹底的に研究し、どうやったら振り向いてくれるかを考えましょう。

コミュニケーションの本質

コミュニケーションの本質とは何か。この命題は人それぞれの答えがあると思いますが、僕は「コンテクストの共有」だと思っています。

CSRの概念はグローバルなものであり、いわゆるカタカナ語が多いカテゴリーでもあります。またビジネスカテゴリーでもニッチであり、一般生活者の“前提となる知識”がほとんどない場合も多いです。

僕はコンテクストのローカライズといっているのですが、グローバル・アジェンダ(世界の社会課題)とローカル・アジェンダ(国内の社会課題)の問題もありますね。

世界的には「人口増加」が問題ですが、国内は「人口減少」が問題となっています。グローバルアジェンダをそのまま日本に持ってきても話は通じませんよね。こういうことです。

株主・投資家、取引先、顧客、従業員、地域社会、などのステークホルダーとどのようにして、自社のコンテクストを共有できるか。そのために本来はCSR報告書があると思うんです。

一般の方は社会問題や非財務領域の話はほとんど知らないので、アジェンダセッティングから自社の課題、そしてそれを解決する道筋と具体的事例とコミットメント。これらの要素をストーリーとしてまとめ開示してこそ、コンテクストの共有までできます。

これらはガイドラインなどでも重要とされる項目です。今一度、CSRコミュニケーションとCSR報告書の関係性を見直してみましょう。

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まとめ

確実に言えるのは「CSR報告書は“カタログ”ではない」ということです。“察する”ことを強要するCSR報告書は、読者となるステークホルダーへの冒涜とも言えます。

ありきたりですが、コミュニケーションとは双方向のエンゲージメント活動であり、ステークホルダーの言い分を受け入れてこそ、CSRコミュニケーションが成り立つのです。

だからマスメディアでCSRコミュニケーションは成立しない(アピールにはなってもコミュニケーションではない)と私が言い続けているのです。

CSR報告書制作において、ベンチマーク(競合他社)を研究するのもいいですが、来年からは、バウンダリにおけるステークホルダーをより研究していきましょう。さあ、今年は去年より1人でも多くのステークホルダーと対話をする機会を増やしてはいかがでしょうか。

きっと、新しい気づきがあり、よりステークホルダーによりそったCSR報告書が作成できることでしょう!まずは担当の制作会社の方と議論をきちんと交わしてから、制作実務に入りましょう。従来どおりの“カタログ”を良しとしないのであればね。



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執筆者:安藤 光展[→プロフィール詳細]