CSR就職活動

CSRと就職活動

2016年は、6月1日から解禁(実質的な議論は別として)となりました。

「ブラック企業」が2013年に流行語大賞にノミネートされ、トップ10に入賞したころから、企業の従業員に関する情報開示のプレッシャーが大きくなっているようです。特に就職活動を行なう大学生の一定数は、企業のそのあたりの数字をみてるようですね。

で、その従業員に関する制度や数字はどこに書いてあるのか、というとCSRのカテゴリーなんですね。

CSR情報が採用活動に与える影響、について考えてみます。

基本情報以外の会社情報

「求職者が求めている“基本情報以外の会社情報”は?」調査結果発表

全体の半数以上が「公開されている求人の情報不足から応募をためらった経験がある」との結果から、公開されている求人情報の内容が応募の動機付けとなる重要な要素である事が判明しました。
求職者が「長く働く事を前提に」ワークライフバランス(勤務時間・残業時間)及び、仕事に従事する上での将来像(昇給・昇格)をイメージするための情報を求めている事が読み取れます。

CSR就職活動

マンパワーグループの調査によれば、上記のような結果になったとのこと。CSRでいう、労働慣行の領域はやはり重要な開示項目ですね。CSRは非財務情報と言われていますが、結局は「従業員に関する情報」の必要性が大きいです。なのに、開示していない上場企業もたくさんあります。やましいことでもしているのでしょうか。また、ズバリ「CSR活動」と答えた人が5.8%いるのにも驚きです。

最近は、新卒向けリクルートサイトに、CSRコンテンツへのリンクを設置する企業が増えています。とても急速に。

大手企業を中心に、採用サイト(新卒・中途ともに)へCSR情報掲載をするところが増えているのは、定点観測で知っていたのですがこの傾向は続きそうです。調査では全体の6%程度の人たちが「CSR活動」をそのまま知りたがっていましたが、その人たち以外にもポジティブよりなイメージを提供できるからかもしれません。

また調査では「勤続年数」や「離職率」なども気になる人が多いようですが、例えば東洋経済の『新入社員に優しい「ホワイト企業」トップ500』(2016)という記事では、「新卒3年定着率」指標にランキングを作っています。こういう情報が求められる世の中になってきたということもあるのでしょうか。

新卒就職人気企業ランキング

その他には、例えば、楽天の「みんなの就職活動日記」の調査『2017年卒 新卒就職人気企業ランキング』では、評価項目に「社会的責任の魅力」というのがあります。すごいですね。

ちなみに、総合ランキング等は記事を参照していただくとして「社会的責任の魅力」で上位に入った企業を紹介したいと思います。

■事業自体が社会貢献
1、JR東海
2、三菱地所
3、東京メトロ

■法令遵守の姿勢が強い
1、三井住友信託銀行
2、NTTデータ
3、野村総合研究所

■地球環境に配慮している
1、一条工務店
2、ユニリーバ・ジャパン
3、デンソー

■女性活用の姿勢が強い
1、ANA
2、資生堂
3、ワコール

■文化・芸術・スポーツ活動に熱心
1、東宝
2、ポニーキャニオン
3、アシックス

こういうカテゴリー枠自体も興味深いのですが、いわゆる総合的なCSR評価が高い企業というよりは、やはり情報開示に積極的な企業がイメージ作りに成功しているパターンのように見えます。こういうランキングを見ると、情報開示って重要なんだなと再認識します。

もちろん、これらのコミュニケーション活動も、ステークホルダー・エンゲージメントの1つといっても良いでしょう。

まとめ

CSR関係者の中には、就職希望者(新卒・転職)も“未来の従業員”ということで、重要なステークホルダーと考えている人たちがいます。

特に、予算等の関係で会社案内パンフレットを廃止し、CSR報告書と会社案内を合わせた「コーポレートレポート」を作る企業も少しずつですが増えています。そういう所は特に、想定読者に就職希望者が入るのでしょう。

「CO2排出量(GHG排出)がこの企業は少ないから入社したい!」という人はさすがにいないでしょうけど、「女性役員数が業界では一番多いし、ワークライフバランスに関する制度も多いし、働きやすそうでいいな、入りたいな」という人は結構いるのではないでしょうか。

つまり何が言いたいかというと、企業は上場していなくても、従業員に関する情報はちゃんと発信したほうがいいですよ、ということです。CSRの情報開示のコストを削っても、採用業務の予算を余計にかけててはもったいないです。CSR担当者は、人事や広報などの部門と連携して適切な情報開示を行い、就活生にアピールしていきましょう!

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