グリーンボンド

社会的責任の資金調達手法「グリーンボンド」

2016年3月末に、環境省より「グリーンボンドに関する報告書の公表について」というリリースがあったのを知っていますか?

グリーンボンドとは、企業や地方自治体等が再生可能エネルギー事業などのグリーンプロジェクトに要する資金を調達するために発行する債券のこと。環境省ではその背景を以下のように解説しています。

近年、経済開発協力機構(OECD)や国際エネルギー機関(IEA)の報告書等においては、2℃目標の達成に向けた社会経済システムの移行に伴い、化石燃料関連資産が「座礁資産」(その取得に要したコストを回収できず投資家にとっての価値を失う資産)となる可能性が指摘されています。こうした中、グリーンボンドは国際的に発行・投資の動きが活発になってきています。一方、我が国では、一部の事例は見られるものの、国内におけるグリーンボンドの発行は活発ではありません。

さらに環境省は「近年我が国でも、機関投資家等の間でESG投資が普及しつつあり、こういった流れの中で、グリーンプロジェクトへの投資(グリーン投資)の需要が高まることが予想される」としています。当ブログの読者であればESG投資は知っていると思いますが、その延長線上と考えるのが日本っぽい解釈なのかもしれません。

実例を含めて、グリーンボンドのまわりの情報をまとめます。ちなみに、グリーンボンドは呼び方や表現が国や運営体によってまったく違うこともあるので気をつけてください。

グリーンボンドの規模

2007年に欧州投資銀行(European Investment Bank:EIB)が再生可能エネルギー・省エネルギー事業の資金調達に係る債券(Climate Awareness Bond:CAB)を発行した。その後、世界銀行、アジア開発銀行、アフリカ開発銀行等の国際開発金融機関が同種の事業に係る債券を「GreenBond」と銘打って発行した。その後、グリーンボンドの発行額は年々増加しており、2015年は年間400億米ドルを超える発行額となった。

グリーンボンド

他にも様々なデータなど汎用的な形で紹介されているので、興味がある方は直接レポートを確認してみてください。国内外の事例もいくつも紹介されてます。

参照:環境省|平成27年度 グリーン投資促進のための市場創出・活性化検討会報告書 ~我が国におけるグリーンボンド市場の発展に向けて~

グリーンボンドの最新事例

スターバックス

米コーヒーチェーン大手スターバックスは16日、環境に配慮したコーヒー豆農家などを支援するための資金5億ドル(約540億円)を社債で調達したと発表した。この資金は環境への配慮や労働環境の基準を満たしたコーヒー生産地への支援などに役立てる。スターバックスを支えるサプライチェーンの充実と社会貢献を両立させる。
米スタバ、コーヒー豆農家支援へ社債 540億円調達

スターバックスの事例です。また記事では「こうした社会貢献を意識した社債は、「グリーンボンド」などと呼ばれている。企業の社会的責任(CSR)に対する関心の強まりを受けて発行の動きが広がっている。2014年にはトヨタ自動車が17億5000万ドル、今年に入ってからは米アップルが15億ドルを発行した。」ともしています。

質・量ともにすぐれたサプライチェーンを築くにはそれなりの時間と費用がかかります。サプライチェーン・マネジメントの一環での、グリーンボンドによる調達というのは確かにアリかもしれませんね。

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まとめ

グリーンボンドという仕組みを知ったからといって、CSR担当者が何かアクションを起こすというのはあまりないかと思います。

しかし、今回紹介した事例のように、トヨタ、スターバックス、Appleが行なったように、CSR活動のレバレッジをかける良いきっかけになるかもしれません。

CSRでインパクトを出したいけど予算がない。そんな時の切り札にこんな資金調達方法も検討してもよいかもしれません。グリーンボンド自体を実行するだけでも、CSR的なネタにはなります。ISO26000だと、「コミュニティへの参画およびコミュニティの発展:社会的投資」の領域になるのかな。実は投資自体もCSRとして規定されてるんですよね。

CSR/ESG/SRI投資、サスティナブル投資、なんていわれるお金の流れが活発になる社会において、今後伸びることは間違いないけど、CSR活動としてどこまで広がるかはまったく未知数。このあたりはあまり詳しくないので、まずは動向をチェックしていきます。