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サプライチェーン/CSR調達における労働問題は何が問題か

CSRサプライチェーン

サプライチェーンにおける労働問題

皆さんご存知の通り、世界のCSRにおけるリスクマネジメントの要訣は「人」です。

もちろん、環境リスクも重要なのですが、労働慣行・人権に関するリスクマネジメントはCSRにおいて常にホット・トピックスです。

特にBtoB企業や製造業で重要なのは「サプライチェーン・リスク」に対するCSR活動です。そこで今回は、特に人権・労働慣行に関するサプライチェーンの話題をまとめます。

サプライチェーン課題:人権・労働

サプライチェーンの末端

『安全でなく劣悪な労働条件は重大な社会的・経済的損失につながり、環境上の損害に関連する。グローバリゼーションの過程における我々の重要な役割に鑑み、G7諸国には、世界的なサプライ・チェーンにおいて労働者の権利、一定水準の労働条件及び環境保護を促進する重要な役割がある。我々は、国際的に認識された労働、社会及び環境上の基準、原則及びコミットメント(特に国連、OECD、ILO及び適用可能な環境条約)が世界的なサプライ・チェーンにおいてより良く適用されるために努力する。』
責任あるサプライ・チェーンとOECD多国籍企業行動指針

また、記事では、「CSRという言葉の普及とともに、先進国の大企業、とりわけ多国籍企業それ自体の立ち振る舞いが、社会・環境にネガティブな影響を及ぼすケースは減少したようにも見えます。しかし、企業間競争が緩和されたわけではなく、各社は川上に向かって、いっそうのコストダウン圧力を強めています。そのしわ寄せが、サプライ・チェーンの先に連なる発展途上国の零細な工場や農園などに及んでいるという認識が大きく広がっているのです。」とも言っています。

そう。日本でもCSRの浸透により、一次サプライヤーを中心に責任ある関わりが増えたものの、サプライチェーンの末端の“存在しているけど見えない人々”まで配慮しているかというと、これは最難関なマネジメントとなります。でもそれではダメですよ、と。

サプライチェーンの再定義

・環境、社会、経済、企業倫理の視点から持続可能なサプライチェーンを再定義すること
・製品の設計から利用まで、サプライチェーンの各プロセスを網羅的に評価すること
・評価制度やインセンティブを見直し、戦略実行に向けた最適な組織を構築すること
持続可能なサプライチェーン:価値の最大化に向けて

PwCのレポートですが、PwCが実施した調査においても500人のサプライチェーン担当役員のうち3分の2以上が、2015年を通して持続可能性がサプライチェーンマネジメントにおいて重要な役割を担うと指摘しているそうです。マジですか。

で、上記引用部分が、サプライチェーンマネジメントで今後重要になるとされる部分です。さらにまとめると「実行組織とプロセスの再定義」ということでしょうか。CSR担当者がどうこうできる部分ではないかもしれませんが、リーダーシップをもって課題に取り組む必要がありそうです。

外国人実習生問題

2014年は全国の実習実施機関の76.0%にあたる2977事業場で法令違反が認められたという。
違反内容で最多だったのは「違法な時間外労働など労働時間関係」で25.8%。ある会社では日本人労働者には36協定どおり時間外労働の上限を月80時間としていたが、実習生には恒常的に月100時間超の時間外労働を行わせ、120時間に達していた人もいた。
外国人実習生の受入事業所の76%で労基法違反 事業主は「まともに支払っていては元が取れない」

日本の一部で話題となっている「外国人実習生問題」。まさに“ブラック企業”的な労働問題ですが、以前から問題と言われているのに、何も解決できていないように見えます。

これらの“現代奴隷制”とも揶揄される仕組みを抜本的に変えない限り、この問題はなくならないのかもしれません。

CSRサプライチェーンにおける人権問題

タイの水産養殖業における強制労働に関連して、欧米の大手食品/小売企業に対し、これまでに消費者から複数の訴訟が提起されています。2015年8月にも、米カリフォルニア州において、大手食品企業に対する新たな集団訴訟が起こされました。原告は、調達過程での強制労働の事実を知らないまま大手食品/小売企業から製品を購入し、間接的に人権侵害に関与させられたと主張しています。
第5号 【CSRサプライチェーンにおける人権問題】

EYのレポートですが、タイの事例が紹介されています。もう企業っていかに人件費を削るかばかり考えてますね。その気持ちはわからんでもないですけど、強制労働って本当になくなりませんね。

で、この記事では「今回の事例は、日本企業においても、CSR調達の実施計画策定、または事業に関する深刻な課題が発見された際には、自社単独での管理にとどまらず、外部機関や専門家との協働による多様な対応策を採用することにより、本質的な課題改善の重要性を示唆しています。」とまとめています。

やはり自分の背中は自分では見れない訳でして、すぐに相談できる専門家を日頃から連携する必要はあります。顧問契約する必要はないと思いますけど、定期的にコミュニケーションをとっておきましょう。

グローバルCEO調査

最も懸念しているリスクとして、全体では、「オペレーショナル・リスク」が47%と最も多く、次いで「規制上のリスク」と「戦略リスク」がともに36%となったのに対し、日本のCEOでは、「コンダクト(不正)リスク」が37%と最も多く、次に「サプライチェーンリスク」が33%と続き、「オペレーショナルリスク」、「マーケット・トレジャリーリスク」と 「環境リスク」がともに30%となった。昨今相次いでいる企業不祥事を背景に、不正関連のリスクに非常に関心があり、また、国内外において複雑化するサプライチェー ンに対するリスクに敏感であることがうかがえる。
KPMGグローバルCEO調査

KPMGのレポートですが、企業なので競争力についての意識の高さはもちろんのこと、リスクマネジメントとしてサプライチェーンに関する部分にも確実に関心が集まっているようです。そりゃそうだ。サプライチェーン上に事業リスクがたくさんあるんだもん。

リーバイスのCSR事例

中国にくすぶる労働環境問題、リーバイスの場合

この事例は興味深いです。タイトル通りの内容なのですが、リーバイスは90年代からの中国における労働慣行との戦いのストーリーがよくまとまっています。

グローバル大手になると、何をしても工場を持つと叩かれるわけですが、その中での葛藤などが興味深い事例となっています。

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まとめ

グローバルなCSR先進企業は当然のように先手先手でせめていますが、日本企業の多くはまさにここ数年で“取組み始めた”という企業が多い印象です。

こういうレポートや事例は超大手ばかりがピックアップされるので、初期フェーズの企業はどうやって対応したらいいのかわからないでしょう。

現実的には、規模の大小はあるにせよ、外部専門家を含めて「どこまで、何ができるか」という現状分析と戦略構築でしょうね。ちなみに、製造業でなくてもサプライチェーンマネジメントが重要です。人材系・IT系とかモノ作ってないからって、逃げられるわけではないですのでお気をつけください。



執筆者:安藤 光展[→プロフィール詳細]

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