CSV本

CSV経営戦略

今回の読書メモは「CSV経営戦略 本業での高収益と社会の課題を同時に解決する」(名和高司、東洋経済新報社)です。

CSV(Creating Shared Value、共有価値創造)の話は、CSRに興味がある方であれば一度は聞いたことがあると思います。

本書は、昨今ではCSV研究でも有名で、大手企業の社外取締役なども多数している名和先生の最新著書です。

世界的なCSR先進企業と呼ばれる、ネスレ(CSVの元祖、ポーター氏の論文より早く提唱していた)をはじめ、良く聞く企業を改めて紹介。また、日本企業らしいCSVということで筆者が提唱している「J-CSV」や「CSV2.0」という概念の元、日本企業も多数事例として紹介されています。

CSVは、CSRの「リスク&オポチュニティ」のオポチュニティの部分であり、戦略や事業機会創出の手がける概念です。その思考にどうやって辿り着けるか、ということで丁寧に書かれているので、現在進行形で実践している企業にとってはヒントがたくさんあると思います。

微妙だった点は、よくあるCSV本と同じで事例紹介と概念の解説で終わってしまっている所でしょうか。

「CSV経営戦略」なので、実践ノウハウを期待してもしょうがないのかもしれませんが、超大手企業(世界も日本も)の一部の例だけでCSVをまとめられてもなぁ…と。中小企業やベンチャーのくだりもあるのですが…。

水上先生のCSV本もでしたが、自分の主催するコミュニティの企業や仕事で関わる企業ばかり紹介されると、ステマっぽく見えてしまって…心が歪んでいてすみません。多分、そんなことないと思うんですけど…。良い書籍なだけに、なんか見せ方がもったいない気がして。

個人的には、世界的なCSRガイドライン(ISO26000など)との整合性についての話を読みたかったかな。CSR活動の実務ではCSVよりガイドラインのほうがインパクトがまだまだ大きいし、個人的に気になる所だったので。

CSR担当者向けというよりは、CSR担当役員やベテランCSR担当者、経営企画やマーケティング系の方が読むと面白いかなと感じました。

CSV経営戦略

CSV(共通価値の創造)とは、戦略論の泰斗マイケル・ポーター(ハーバード大学教授)が、2011年に提唱した新しい経営モデル。企業は、抜本的な社会課題を解決することで、経済価値を同時に増大できる。これは慈善や非営利の事業ではなく、本業としての経営戦略に組み込むことで初めて実現できる。
CSVは、従来の戦略論を根本から見直す試みであり、世界的にも大きな影響を与え始めている。本書では、日本企業がCSVをいかに自社の経営戦略に取り込み、飛躍を遂げていくべきか。ポーター教授の下で学び、現在ビジネススクールで教鞭をとりながら、ファイストリテイリング、BCGをはじめとする企業のアドバイザーを務める著者が、ポーター教授の理論やCSRとの違い、豊富な内外の企業事例、そして、実践に至るまでを具体的に提案するものである。
著者とポーター教授、グラミングループ総裁のムハマド・ユヌス博士との各対談も収録。