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倫理的消費と消費者教育とCSR

倫理的消費

倫理的消費と消費者教育とCSR

ここの所、ソーシャル界隈(?)で「倫理的消費」というワードがにわかに盛り上がっているようです。

その火種は、消費者庁の『「倫理的消費」調査研究会』です。行政レベルで議論がされることは素晴らしいこと。なんで、もっと早くやらなかったんだ、と思うくらい。

委員は企業も大学系の人も普通っぽい人も、業界団体っぽい方など多様な顔ぶれ。そして研究会資料も閲覧できるようになっているので(かなりな情報量ですが)、興味がある方はどうぞ。

消費者側の社会全体に関するリテラシーが上がれば、それがプレッシャーとなり、企業のCSRも推進されていくでしょうし、CSR領域の人たちも良くも悪くも注目すべき動きです。というわけで、他の視点からも倫理的消費についてまとめてみます。

倫理的消費の現状

世界中の経済社会にとって、社会的責任と環境への責任という問題の意義が高まっている。経済倫理分野のこれまでの研究はその多くが売る側ないし企業側に注目し、多くの場合、消費者は受け身の存在であるとして、ほとんど取り上げてこなかったが、近年、消費者の倫理的行動に関する研究が急増している。
日本の消費者の倫理的行動については、これまでのところ、日本の学術論文で研究したものはまだ少ないが、企業現場やメディアはこのテーマに関心を強めている。その結果、倫理的な消費という言葉が日本でも普及し、マスコミ等で類似した表現も含めて使われる機会が増えた。
日本における倫理的消費の現状 -日本消費者調査の結果から-

しっかりめの「倫理的消費」に関する論考ですので、一度を目を通しておくべきでしょう。

また、本レポートでは意識調査をしており、それぞれ興味深い内容となっています。調査の結論としては『日本の消費者の間でも環境にやさしい商品や倫理的な商品に対する意識と関心が高まってきているが、倫理的消費に対する基本的態度と現実の行動との間にはまだ一定の乖離があることが明らかになった。』ということ。

まぁ、この手の調査では毎度同じ結論になるのですが、その中身はなかなか面白いものでしたね。

北欧諸国の消費者教育と倫理的消費

北欧諸国の消費者教育は、様々な教科を統合的に扱い、消費者市民社会において身に付けるべき能力を適切な教科において教えるという方法を取っている。
また、その手段として批判的な思考能力の養成を重視しており、環境への配慮や倫理的行動といった責任ある市民として積極的に社会を変えていく存在、そうした意識の高い消費者市民による持続可能な社会の構築および共に生きるための価値観の形成を目指している。北欧の消費者市民教育は知識の取得よりも実践的な「生きる力」の取得を目標としていると言えよう。
平成20年国民生活白書

ちょっと前の内閣府の資料ですが、倫理的消費を考える上と重要と思いピックアップ。

該当ページは「我が国と北欧の消費者および消費者教育の比較」というページなのですが、ここで「環境に優しい消費」や「フェアトレード製品」という項目の知識調査などがあります。

結論からいうと、日本はノルウェーにくらべ「フェアトレード製品」を知らなさすぎる、という話です。そもそも、ノルウェーは日本の倍「環境・倫理的消費者」がいると。社会全体は難しいにしろ、各家庭レベルであれば、十分教育できそうな気がしますけど。

倫理性の境界線はどこある?

消費の場合、何をもって「負の副産物」とするのかは難しい。悪趣味な衣装を身に着けている人に、「その服は不快だから変えてほしい」と言える場合はほとんどない。風紀を乱す、あるいは公序良俗に反すると断定できるケースと「表現の自由」との境界線は曖昧なことがあるからだ。
もうひとつ、「倫理性」が問われるのは、ある財の消費の行き過ぎがその財の供給量を枯渇させ、後の世代からその財を享受する可能性を奪ってしまうような「不平等」である。神から与えられたこの世の恵みを、ひとつの時代、ひとつの世代の人間が独占的に消費してしまうという「非倫理性」の問題である。
倫理的消費とは何か

このレポートも個人的には納得感がありましたので、ピックアップ。

この記事を書くために論文やレポートを色々みてきましたが、これは結構哲学的というか、「倫理という意識をどうとらえるか」が書かれている感じ。

倫理的消費は、社会にとって絶対的な「善」であることは間違いないのですが、それを絶対的な価値観として他人に押し付けるのは、それこそ多様な社会を抑圧するものであり“倫理的ではない”とされてしまう気もします。

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他には、僕も講演をさせて貰ったことのある「倫理的購入・CSR調達ガイドライン研究会」の資料なんかも役に立つかもしれません。

まとめ

エシカルという概念を企業側からみると、CSRのサプライチェーンマネジメントの話だと理解すればよいでしょう。

消費者教育は、ISO26000でも規定されているように、CSR活動でも重要な項目の一つとされています。サプライチェーン内での倫理的配慮はもちろんのこと、消費者(BtoB企業なら顧客企業)を巻き込みながら、ビジネスを進めていきたいものです。

CSR関係の方も複数人が消費者庁の委員をしているので、サプライチェーン・マネジメントやCSR調達、消費者課題の対応など、エシカルとCSRを分離して考えず(別々の枠組みで考えず)、CSRのムーブメントに巻き込んでいただければと思います。

逆にそうできなきゃ、何のための委員だよ?となるでしょうね。僕じゃなく、それこそ倫理的消費者が。

一点不安があるとすれば、参加しているごく一部の企業CSR事例が絶対価値みたいになるのは避けていただきたいと思います。

消費者や顧客企業の中で倫理的価値観の広がりがあれば、社会は間違いなくより良い方向にいくと思います。僕も注目していきます。



執筆者:安藤 光展[→プロフィール詳細]

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